(2)・2 蛙の子は蛙、ストーカーの姪はストーカー
「というわけでリィちゃん達をばびゅんと追いかけて来ましたの!」
「……何がどういうわけなんですか?」
ビッグニュース。
朝目覚めたら隣でルチアーナ嬢もといルチアさんが添い寝してました。
昨夜、久しぶりに普通の宿屋で寝た師匠。
この前の『蛇と蛙の雷事件』(思い出したくもない!)で、無情にも夜の寒空のしたに気絶した私を置いていったあの人に追い付いたのも昨夜。
私は自作だが未熟すぎる魔法具で室内に侵入すると、私の鞄から毛布を取り出して床に横になった。
師匠の部屋は当然シングルなので私の入る布団などないし、部屋をとるにもお金があまりない私は自前で払わないといけない。
そんなん無理だっ!と、叫べるほどに私には現在所持金が無さすぎる。さらにいえば師匠の布団に近づきすぎると、気配に気付いた師匠が雷撃ってくるから迂闊に近づけないので少し離れて固い床で眠ることにする。
ちなみに私の荷物は師匠のお友達であり、私の先生でもあるお方から餞別でもらった『厄よけリング』をいつも入れているため盗まれることはない。『厄よけリング』に触れた物体はやましい心を持った者には見えないだけでなく、その物を危険から守る仕組みなのだ。
ちなみに持ちきれないほかの荷物は、師匠の道具が入っているあの亜空間みたいな魔法具ほどではないが、収納が少ない自作の魔法具の中に荷物をいれている。
だから雷を打たれたときも私の荷物も毛布も無事だった。
………そして次の日の朝、目覚めると隣にお姫様みたいな金髪美少女がいました。
「だぁってぇ、リィちゃんの目撃情報とリィちゃんの匂いとリィちゃんの足跡とリィちゃんの行動予測に時間がかかっちゃって、追い付いたのが夜になっちゃったの……ごめんね?」
ストーカー行為にしか聞こえませんよー、変態お嬢さん。
「で、こっそり入ってみればリィちゃんが無防備にもかわいらしく寝ているんだもの!チャンスと思ってっ♪」
「何のチャンスですか!」
「あ、安心して!わたくしがやったのは抱きしめてほっぺにチューだけだから。そのためにも途中でリィちゃんが起きないようにちょっと……ごにょごにょっを嗅がせちゃったぁっ!ごめんねっ♪」
悪くも思ってないのに謝るな!そして全然大丈夫じゃない!
寝ている私が気付く前に薬を嗅がせ、より深い眠りに入った隙に寄り添って寝る……。
………その行動力に先日のあの人を思い出す。
でもさすがは蝶々の虫人。そのたたんだ羽は伊達じゃない。
「それにしてもリィちゃん起きるのが早いのね。薬の量が少なかったのかしら?あぁ、でも無防備のリィちゃんも可愛かったぁ…。我慢するのが大変だったわ。普段は私に怒ってたり呆れてたり冷めてたりするのに、あ、そんないつものリィちゃんもわたくしは大好きよっ!で、そんなリィちゃんにわたくしが触ってもチューしてもあどけない寝顔でぇ!…もぅ、たまらなかったぁっ!!……あっ、失礼、よだれが…」
……………………………………………。
………誰かぁ…この変態美少女お嬢様をなんとかしてぇ〜……!
だが、早朝の部屋に未だに寝てる師匠を除いて、他の誰かがいるはずもない。
というか師匠に助けを求めるなんて馬鹿以外の何者でもない。
「?リィちゃんどこ行くの?」
「………寝直したら危険な目にあいそうですし、かといってこんな朝早くにどこの店も開いてないと思うので、ちょっと歩いてこようかと」
誰かさんのおかげで頭も痛くなってきたしね。
「えっ、つつつつまり、これ、これって、デートのお誘いっ!?も、もちろん私は今からでも全然OKのノープロブレムよっ!!リィちゃんたら急なんだから、もう………!」
「だからどうしてそうなるんですかっ!?」