(1)・12 終わりよければ全て、………良くない!
さてさて『謎のビーフちゃん』。侯爵様の告白に反応は………。
「……いいの?」
「…ぇ………」
「嬉しいわぁ………あなたがそう思っててくれてたなんて…。しかも私が宣言したあとになんてね……」
「…お前、俺を諦めるような宣言を………」
「私はただいつものやり方をやめようという意志表示をしようとしただけよぉ?ちなみに詳しくいえば本当はあのあと「だったら強行手段として『布団の上』で言いなりにさせるだけだわ」と言おうとしたのだけれど。ふふ…………私がこれしきのことであなたを諦めるとでも思っていたのですか?」
そんなわきゃあありませんよね
それにしても嬉しいような悲しいような。
「あなたから本心を聞けて私すごくうれしいわ!…では、さっそく……!」
「ちちちちちちょっと待て!!」
「何を恥ずかしがっているの?ふふ………これからは恥ずかしいという感情さえ忘れさせてあげる…」
完全にやばいほうにイッてますね。
でも助けないのは、あるいみハッピーエンドな展開だし、私も命は惜しいし。
「はっ、恥ずかしいわけでは…」
「あぁ、ここじゃだめね。人が多すぎるし、…………もう危険だわねぇ」
?最後の一体どういう意味だろうか。
「とにかく行きましょうか、………あ・な・た!きゃ〜〜!」
照れながらも蛇姿の侯爵様の尻尾を、握力どのくらいですか?ってぐらいにかなりにぎりしめる小さな少女。
もう片方の手で黒の剣を引きずってるんだから、一見何ものかわからないですから。
でもどうやら帰るみたい。
「『ビーフちゃん』」
「…それで呼ぶなと言ったはずよぉ?あなたは、天然なのかしらぁ…?わざとなのかしらねぇ…?」
そうは言ってるのに剣を向けようとはしないのは、たぶんそれほど怒ってはいないのかも。
今はハッピーエンドタイムだしね。
「じゃあ、私達はもう行くわねぇ………………愛の巣へっ!」
ちなみにさっきから侯爵様が静かなのはあまりに強く尻尾を掴んだために失心中。
掴みすぎです!愛の巣に着くまでに天国に着いちゃいますよ!
と、いう忠告も言えずに部屋の大きな窓から飛び降りていった。
今出るときに侯爵様が窓枠におもいっきりガンガンぶつかってましたけど本当に愛してるんですよね?
窓からじゃなく入って来たときみたいに玄関からでればいいのに。
というか夜中なのに今家に帰るんですか?
それにここ三階なんですけど。
着地できるであろうあなたはともかく侯爵様はどんどん危なくなってますよきっと!
疑問府だらけだっ!
「あ、言い忘れてたけど」
ぎゃあ!いきなり窓から現れないでください!
狼の私でもぎりぎりなのに、どういう身体能力してるんですか!?普通の蛙はそこまで飛びませんから!
「あなたも早く逃げたほうがいいわよ〜。他の子達はもう屋敷の外に逃げてるからぁ。……ではねぇ〜」
あれ?そういえば女医さんがいなくなってる。
さっきまでせわしく聞こえてた他の蛇の声や音もないし。
……………………………バチリッ
「……………」
「……………」
振り返ろうとも振り返れないのは私の頭を締め付ける後ろの手のせい。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「…………………焼き、加減…は…………?」
「……………………考えてるとおりだ」
その夜雲一つない空に、突如自然発生した雲。そこからその年1番の大きな落雷が降りました。
結局私はお風呂に入れないまま、またしばらく旅をしなければならなくなった。