(1)・11 蛇に睨まれた蛙……え、逆?
「…なぁに、してるのかしらぁねぇ………?」
「……………」
ザ・修羅場ってやつなんだろうか?よくわかんないけど。
急いで追い付いた私だけど、………何、やってんだろう…?本当に。
なぜか半壊してるドアの向こうには、蛇姿の侯爵様の上に鼻血垂らしてる白衣の女性が座ってる。
座ってるんだけど、………私的には暴れる蛇を押さえ込んでるようにしか見えない。
多分これが普通の反応だと思う。他の人もきっと同じこというと思うから私がおかしいわけではない。
「………それは、浮気と、みなして、いいかしらぁ……?」
やっぱりこれってそういう状況なの!?
『謎のビーフちゃん』の背後のすごいオーラからまさか、まさかね、まさかな、とは思ってたけど。
何と言うか……どす黒いのオーラの一言だね。
私後ろだから見えないけどきっといい笑顔なんだろうな…。
可哀相に………侯爵様固まってる。
女医さんみたいな人は『あらら』といって、悪びれた感じはしない。呆気に取られてる。
ということはやっぱこの人の想い人って…。
「あの女の人があなたの恋人?」
侯爵様明らかにおじさんだし、「三十路は若い子が好物なんだ」「人生色んな恋愛がある」って師匠の友達がいってた。嘘か本当かわかんないけど。
「………ごめんねぇ。天然でおバカさんでこんなときに変なこというダメダメさんを相手にしてる余裕が今ないの〜っ……」
……素直に「そんなわけねえだろ馬鹿が」って言ってくれていいのに…
じゃあ相手は侯爵様かぁ。……………おじさん趣味?
いやでもこの人は魔法具で三十路から幼女になってんだから、侯爵様も変化してる可能性があるか。
さっき言ってたけど、確かに蛇なら種類によっては尻尾にさすだけで死ぬことはないのかもしれない。
………刺しまくっていいわけではないだろうけど。
「………もう、いいわ…」
「………ぇ……」
「あなたは昔からそうね……。私に優しくしてくれるのに私がそれに力強く答えようとするといつも逃げるんだわ……。だからもうやめるわ……」
…その原因は力強くが強すぎるせいです。
『ビーフ』ちゃんはちょっとしょげてる。ちょっと可哀相。ヤンデレは危ないけど愛の塊だからね。
………でも前から見る勇気は私にはまだない。
……あなたは、これしきで諦めるんですか?
私は師匠についてきますよ。たとえあの人が嫌がっても。私を売っても。私に危害を加えても。
どちらにしても私は一人ぼっちなんだから、あの人についていくんです。
『謎のビーフ』ちゃん。
あなたはそれだけで恋を諦めるんですか。何年かかったのかは知らないけどここまできてやめるんですか。
ここまできたのにあなたはそれを捨てて今の想い以上の恋愛がこれからの未来にできるんですか!?
女は根性ですよ!?私も根性で師匠から生き抜いてきたんですから!
それに一度恋したのなら、それが長ければ長いのなら途中で投げ出すのは大損です!!
………そう、言えればいいんだけど今の私は完璧に部外者。
私が口だしすることじゃない。
これは本人が気付かないといけないことだからすっごくすっごく歯がゆい!。
「………なにも、そうは、言ってないだろうが…」
「………?」
「確かに逃げてることは認めるが……………その、き、嫌いとは言ってないだろうが!……こ、これからも追い続けるがいいさ!た、ただし、危なくないやり方で、だ!」
よく言った侯爵様ーっ!
あなたが言わないと意味がなかったんです!偉いっ!
しかも微妙にツンデレっぽいですね!
「おー、侯爵様がついに言った〜」
女医さんも喜んでるよ。
「あ、一応言っときますけど浮気中じゃありませんからね。そこらへん誤解せずに。私十二歳以上の男は範囲外ですから」
………後半は、聞かなかったことにしよう。