繋がれたバトン
歩けば、必ず見つかるとは限らない。
努力は尊い。
だが、本物は努力の先に落ちているわけではない。
ときにそれは、
人と人の間に、ひっそりと眠っている。
緑風園が探しているのは商品ではない。
誇りの置き場所だ。
だが、現実は甘くなかった。
四人は一日中歩いた。
路地裏も、古い看板の奥も、
シャッター半分の店も。
それでも、五家宝や羊羹に並ぶ「何か」は見つからない。
「……今日は、帰ろうか」
夕暮れの色が濃くなる。
「せめて、幸吉さんに挨拶してから」
作業場を訪ねると、
五家宝職人は四人の顔を一目見て鼻で笑った。
「湿気た煎餅みたいな顔してやがるな。何だ」
事情を話すと、幸吉はしばらく黙った。
やがて、ぽつりと言う。
「……一徹んとこ行ってみろ」
「え?」
「炭で焼いてる煎餅屋だ。頑固だが、味は嘘をつかねえ」
「でも、前に店長が……」
「若いのが一人で行っても、あいつは首を縦に振らねえ」
幸吉は立ち上がる。
「俺が行く」
四人は顔を見合わせる。
商店街の最奥。
炭の匂いが漂う小さな作業場。
「……幸吉?」
老主人が顔を上げる。
「まだ生きてやがったか」
「お互い様だ」
言葉は荒いが、空気は柔らかい。
話を聞いた一徹は、しばらく黙り込んだ。
やがて、低く言う。
「……条件がある」
カウンターの端に置かれた名刺を指で弾く。
「知り合いがな。焙煎だけやってる馬鹿がいる。豆はいい。だが、売れねえ」
四人は目を瞬く。
「助けてやれ。
それができたら、うちの煎餅の話をしてやる」
炭のはぜる音が、小さく響いた。
五家宝、羊羹、煎餅。
そこへ、コーヒーという別の香りが混ざる。
探し回っても見つからなかったものが、
一言の紹介で動き出すことがある。
市場は数字でできている。
だが、商店街は顔でできている。
五家宝から煎餅へ。
煎餅からコーヒーへ。
それは拡大ではなく、
信頼が手渡されていく物語だ。
次に問われるのは、
その“別の香り”と、どう向き合うかである。




