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第九話

 盗賊を捕まえたあとは、近くの村までロイスが走った。縛られた彼らは、四人で見張ることになる。

 しばらくするとギルド職員たちが駆けつけて、あとは引き受けることになってくれた。


 手持ち無沙汰になったサリアたちは村に帰ることになった。


「マイもサリアもよくやったよ!」


 ロイスが笑顔で褒めてくるので、愛想笑いでごまかす。


「ふ、ふん。少しは役に立つようね」

「素直に褒めてあげればいいのにぃ? しょうもないプライドが邪魔してるわねぇ」

「……んだと、この駄肉!」


 すぐ喧嘩に発展するこの二人は、相変わらずだ。


 村への帰路へと着く途中、相変わらずロイスの周りを二人が固めている。

 一方マイはというと、サリアの横についている。彼女は何かを期待するような目で見上げていた。


「よくやったね、マイ」


 笑顔で褒めると、彼女は嬉しそうに手を握ってきた。

 

 あ、これ……完全に懐かれてしまった。


 サリアは困ったように顔を背ける。もしかして、これはロイスのハーレムを崩してしまったのではないのだろうか。

 いや、不都合はないのだが。


 振り返るロイスと少し目が合った気がした。何か言いたそうな瞳に、サリアは曖昧な表情を返すだけだった。



※※※※※※※※※※



 生き残った村の人たちが迎え入れてくれた。半分以上は避難や隠れ家に身を隠していた。それでもやはり傷跡は重いからか、彼らの表情は暗い。


 それでも代表の村長らしき人は笑顔を見せてくれた。

 無理している笑顔だというのは、傍から見ても分かる。


 それでも、歓迎を無碍にできないということで、ロイス以下パーティーメンバーたちはありがたく受けることにした。


 サリアは歓迎の宴会を遠目に見ながら、飲み物を飲んでいる。


 焚火の一番目立つ位置にはロイスが座っていた。彼は村娘に囲まれて、笑顔で話していた。

 鈍感人間なくせに、こういったことはしっかりと受け取るんだなと心の中でため息をつく。


 ココットは怪我人の治療をしており、マイは一杯のご飯に目を輝かせている。リオの姿は、どこを探してま見つからなかった。


「だから違うって言ってるでしょ!」


 そんなとき、宴会の空気を割るようにリオの声が聞こえてくる。雑踏にいた人たちは気づいていないようだが、サリアにははっきりと聞こえた。


 視線を巡らせると、夜の帳に紛れるようにリオが立っている。腕を組んで苛立たしげに脚を揺らしていた。

 彼女の対面にいるのは、この村の女性だろうか。それにしては、背筋が伸びており気品に満ちている。


「しかし、私がリオお嬢様を見間違うはずはありません」

「いーい? 私はそのリオと関係ない他人の空似! だから、その話はしないで!」

「……そうですか」


 落ち込む女性を放って、リオは顔を背けた。そのいかり肩のまま、サリアの横を通る。

 視線があって、彼女は素っ頓狂な短い悲鳴を上げた。


「な、なんだサリアか……」

「なんだとは酷い言い草だけども」

「……もしかして話を聞いてたり?」


 リオらしくないしおらしさに、サリアは首を横に振る。


「なんのこと?」

「聞いてないならいいのよ、聞いてないならね……」


 それだけいうと彼女は宴の喧騒に戻っていった。

 そのあまりの下手くそな嘘をついた彼女の背中に、大きなため息をつく。


 リオはロイスの近くによると、寄っていた村娘たちに猫のように威嚇していた。そのまま彼の腕に擦り寄って、甘えた目を見せている。

 それがどこか痩せ我慢をしているように見えて、サリアは胸が少しざわつく。


 それでも、彼女に問い詰める気はない。きっと触られたくない何かだろうから。


 手に持ったジュースの入ったグラスに口をつける。すると目の前に焼いた鶏肉が差し出された。

 骨付きのそれを持っていたのは、口に食べ物を含んだマイだった。


「どうしたの、マイ?」

「ちょっと待って、今飲み込む」


 しばらく口をモゴモゴ動かすと、彼女は大きく喉を鳴らした。


「飲み込んだ」

「ふふ、それで?」

「これおいしい。サリアも食べると良い」


 お言葉に甘えて、貰うことにした。


 口に含むとホクホクの食感がやってくる。甘辛いタレでコーティングされた肉は、とてもおいしくていくらでも食べれそうだった。


「うん、おいしい」


 マイはそんな感想を漏らしたサリアを見上げてくる。頭を撫でてと言わんばかりに、尻尾を振っているように錯覚する。

 彼女の望み通りにしてあげると、満足そうに喉を鳴らした。


「サリアは宴会をもっと楽しまないの?」

「んー? 楽しんでるよ。ただ、主役は私じゃないからね」

「……そうかなぁ?」


 サリアの言葉に、どこか納得いかないようにマイは頬を膨らました。


「サリアがいなかったら逃げられてた」

「それでも、だよ。人はハッキリしたヒーローを崇めたがるんだよ」


 そう、それこそロイスのような主人公の役目だ。自分はそれを固めるための脇役であるだけ。

 そんなサリアの言葉を聞いても、マイは納得いってなさそうであった。


「やっぱり私は、サリアが一番だと思う」

「……その言葉だけで充分だよ」


 過去、パーティーをかき乱していた自分には、中心に行く権利はない。それがサリアの出した答えだった。

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