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第六話

 村の中は静かだった。ギルド職員の人たちがそこかしこで調べものをしている。


 皆で聞いて回った話を総合すると、盗賊はすでに立ち去ったあとらしい。このまま放っておけば、被害はさらに拡大するという。

 

 情報集めから、サリアたちは今はどこから探そうかという話題に切り替わっている。


「何しているの?」


 リオとココットとロイスの三人が話している中、マイが何やら詳しく調べていることに気がついた。

 サリアが尋ねると、彼女は顔を上げる。


「これ……──」


 そう言いながら手渡されたのは、人間の指だった。


「ヒャア!?」


 唐突のことで、サリアは涙目になりながら飛び上がる。

 取り落とした人差し指を拾いながら、マイは小さく息をつく。


「そ、それ誰の指?」

「わからない。けど、した人なら何となくわかる」

「……どういうこと?」


 聞くと、マイは少し迷うように視線を彷徨わせる。

 つばを飲み込むようにのどを鳴らすと、覚悟を決めた表情をつくっていた。


「かつての私の仲間に、戦利品として指を集めている人がいた──」



「──なるほどね、だから今回の依頼を受けたのね」


 この依頼に不満げだったリオは、サリアとマイの説明を受けて納得するように息をついた。

 マイは無言でコクリと頷く。


 マイの所属していた盗賊団は、彼女を見捨てたあとに壊滅したと風の噂で聞いた。しかし、それに生き残りがいたというのを知ったら、心情は穏やかではないだろう。


「依頼書には、指切りって名乗ってたって要項があったから」


 彼女が珍しく選んだのは、それが目についたからだという。

 マイもマイなりに過去の自分との決別を願っているんだなと、サリアはしみじみ思う。


「経緯は分かった。ただ、もっと早く相談してくれてもよかったぞ?」


 腕を組むロイスに、「ごめんなさい」と彼女はいう。

 いや、ハーレム状態の彼に言える方がどうかしているとサリアは思うのだが、口にはしなかった。代わりに、マイを落ち着かせるように頭をなでる。


 マイはどこか安心するように目を細めて、短く息をつく。


「しかし、それが分かったとしてどうやって追うのかしらぁ?」


 ココットの疑問も当然だ。

 この村は襲撃されたあと。どこに身を隠したのか分かっているのなら、現地の調査員が教えてくれるだろう。


「大丈夫。私分かってる……その代わり」

「その代わり?」


 ロイスの問い返しに、覚悟を決めたように一拍を置いた。


「私はサリアと行動する」

「うぇ!?」


 突拍子もない提案に、自身の口から変な声が漏れた。



※※※※※※※※※※



 サリアはマイとともに森の中にいた。他の三人は別働隊として動く。

 遠距離通信魔法で位置情報をやり取りしながら、挟撃することになった。


 ロイスたちは前方から。サリアたちは後方からである。

 役職的な観点から見ても、完璧な配置だとは思う。しかし、きっと数日前の自分なら断固拒否するだろうなと思った。

 

 何故マイがここまで信用してくれているのかはわからない。しかし、一緒に行動する以上、少なくとも彼女に失望されないくらいには立ち回ろうと思う。


「見つかった?」


 木に登っているマイに、サリアは声をかけた。


「うん、目印あった」


 マイが所属していた盗賊は、ルートを間違えないように木の高いところをナイフで削る癖があるらしい。

 普段はもう少し巧妙に隠しているようだ。しかし、マイ曰く今の彼らにそれほどの余裕はないという。


 その証拠に、指を落とすなど自分のフェチズムの末の致命的なやらかしをしていたりする。確かに、“余裕のある盗賊なら、もっと慎重に動いたりする”。


──きっと、再集結したばかり。


 マイはそう評価していた。

 一度は解体し散り散りになった盗賊団。しかし、またあの輝かしい日を忘れられずに手を汚す。なんともはた迷惑な悪循環である。


「んっ……と」


 マイはサリアの近くに着地した。相変わらず彼女はとても身軽だ。

 サリアも登ってみたいが、彼女自身運動方面はあまり得意ではない。きっと登ったら落っこちて気絶するのが関の山だろう。


 我ながら何もできないなと、肩を落とした。


「場所は分かった?」

「うん、大体」


 彼女の返答を聞くと、杖を掲げる。電気の応用で、遠い相手と連絡を取れる魔法を使う。


『あいて、もう!』


 連絡が繋がった瞬間、リオの大きな声が頭の中に響く。思わず肩を跳ね上がらせると、マイが心配そうにこちらを見つめていた。


『だから、なんでココットはそんなにロイスにひっついてるの!?』

『もちろん、負けないためよ』

『だーかーらー、そんな風にいやらしくアピールすんなこの駄肉!』

『貧乳はアピールできないもんねぇ?』

『ははは、仲良く──』


 ロイスが諌めるあたりで無言で魔法を閉じる。


「どうだったの?」

「……なんか話に割り込めない雰囲気だった」

「うん、それはかなり危険」


 マイの言葉ももっともだ。

 いくらAランクとは言え、ここまで敵地で油断していると怪我をしかねない。


「あー……」


 自分の抜けた穴がそんなに重要だったとは、計算外だった。後日改めてロイスに忠告しておこうと誓う。

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