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第四話

 川に着くと、ロイスがそこにいた。少し疲れたようにため息をついている。


「どうしたの?」


 話しかけると、肩をびくって跳ねさせてから彼は振り返る。


「……なんだサリアか」

「幼馴染になんだとは随分な言い草だね」

「……ごめん、さすがに“二人の女の子から挟まれるのは気が休まらなかったから”」


 彼の言葉に「あー……」と、納得する。いつもはほとんどサリアの相手をしていればよかったのだ。しかし今はリオとココットにずっと挟まれていた。

 さすがの鈍感男でも、あんだけベタつかれると気疲れするんだなと呆れる。


 男からしたら、多分血涙を流されて羨ましがられるものだと思う。その結果、リンチにあっても文句は言えないだろう。


「で、そのリオは?」

「少し遠くで水浴びしてる。一人で休みたいって言ったら、離れてくれたね」


 ココットが戻ってきた時点で察した状況であった。


 彼の境遇に同情はする。しかし、いつまでも煮え切らない態度を取っているロイス自身も悪いから、何も言わないことに決めた。


「よいしょ」


 サリアはローブに手をかけて、脱ぎ始めた。


「ちよちょちょ! 何してんの急に!?」


 そのサリアの行動を見て、ロイスが顔を真っ赤にする。


「何って水浴びに来たから服を脱いでるんだけど?」

「いや、いやいやいや! 僕がいるでしょ!?」

「ん? あー……、別にロイスに見られても減るもんじゃないし」


 それだけ言うと、下着姿になって川へと足を入れる。

 夜の川の水は冷たくて体の芯に触る。しかし、綺麗にできる時にしとかないと、次いつ水浴びができるか分かったものではない。


「……普通は遠くに行ってみずあびするもんでしょ?」

「なんで? わざわざ遠くに行くの面倒じゃん」


 顔を背けながらもこちらをちらちら見つめている。忙しい背中だなと嘆息した。

 しかし、わざわざそこを指摘する気はないし、見たいなら見ればいい。そもそも、長年パーティ〜として組んでいたのだ。今さら意識するほうがおかしい。


 持っていた布を濡らして、肌を拭いていく。下着を濡らさないように気をつけながら、気持ちの良い冷たさを身に感じさせた。


「……女の子としては、もっと節度を持った行動を取ってほしいな」

「だったら、ロイスがこの場から去るのが普通じゃないの?」

「僕のほうが先にここにいた」


 その言葉にクスリと笑う。


「うん、だから私はロイスを責めてないよ? だったらロイスも気にする必要はない。気になるなら、そっちが距離を取るのが普通、違う?」


 その言葉を耳にして、彼は苦笑する。


「なんていうか、サリアかなり変わったね」


 言われ、サリアは少しだけ考える素振りをする。

 

「ロイスが変わらなさすぎるんじゃない?」

「いやいや、僕だって村を出たときよりは強くなったよ」

「……うん、そういうところだと思うよ」


 雫が水に落ちる音がする。濡らした布をきつく絞ってから、彼女は胸の下から腹部を綺麗に洗う。

 ロイスはやはり落ち着かないのか、顔を真っ赤にしたままだった。しかし、そこの場所から逃げないあたり、彼の本音が少し見えた気がする。


 サリアはあえて気がつかないふりをして、体を綺麗に整えていく。


「あー!」


 そんなときに聞こえてきた声は、リオのものだった。遠くで水浴びを終えて戻ってきたのだろう。


「今日は誘惑してないと思ったのに! やっぱり油断も隙もない! ロイスも何普通にサリアのこと見てるのさ!?」

「……い、いやいやこれは勘違いだよ!」


 慌てて首を振るロイス。その行動が誤解を強めるんだと、サリアは深く長くため息をついた。

 川から上がってから、指を軽く振った。風を起こして、体の水を乾かす。


「別にそんなんじゃないよ」


 慌てるロイスをよそに、サリアは冷静に言い放つ。地面に置いていた服とローブを取って着ていく。


「そんなんじゃないって、どう見てもそんなんでしょ!? わざわざ、ロイスの前で見せつけるように水浴びして!」


 そういうリオは、ロイスの腕に抱きついていた。彼は困ったように苦笑している。

 その彼の姿を、サリアは冷めた目で見つめた。


「遠くに行くのが面倒くさかっただけ。それに、本当にロイスを誘惑する気なら、もっと密着してる」


 言ったところで、彼女の表情は聞く耳を持たなかった。睨み上げ、自分のものとでもいうのにロイスの腕に頬をこすりつけていた。

 酷く滑稽で、笑いも漏れない。かつての自分もこんな感じだったのかなと、少し嫌になった。


「大丈夫。私はもうロイスを取る気はないから」


  リオとサリアを交互に見るロイスは、やはり何もわかっていない様子だ。ここまで来ると、もはや彼の鈍感さは表情物かもしれない。

 それか気づいていながら責任を取りたくないからわざと気づかないふりをしているのか。


 ロイスの腕に抱きついたまま猫のように威嚇してくるリオを尻目に、サリアは歩き始める。


「それじゃ、お二人で楽しんで」


 短く言うと、振り返ることはしなかった。

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