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第三話

 サリアがマイの願いを聞いて受けたのは、Cランクの依頼だった。

 少し遠い村から連絡が取れなくなって不思議に思った冒険者ギルドが使いを出したところ、盗賊の縄張りになっていた。

 その事実確認ができたのがついさっきのことらしい。


「今さら盗賊討伐だなんて、しけてんの〜」


 ため息混じりに言うのは、ロイスの横を譲らないリオだ。彼女は不服そうに唇をとがらせていたと思うと、笑顔になってロイスの腕に抱きつく。


「私たちならパッパッと終わらせられるよね〜?」

「あら、じゃあリオさんだけで片付けてもらおうかしらぁ?」


 そしてそんな彼女に喧嘩を売るのは、ロイスの左腕に抱きついているココットである。


 彼女は宣言通り、遠慮することはなくなったようだ。


「急に出しゃばって何様のつもり? 今まで私は関係ないですぅみたいな顔してたくせに」

「あら、私は関係ないと思ったことは一度もないよぉ? ただ、一番を譲ってただけであって」

「何訳わかんないこと言ってんの? この無駄乳!」


 二人の言い合いの間に挟まれているロイスは「仲良くね〜」と困り顔である。


 そんな光景を見ながら、サリアは一歩引いた位置でついていくように街道を歩く。外から見るとこんな風に見えるんだなっとしみじみと思った。


 街から村までは少し距離がある。この険悪ムードのまま進むのは、いくらAランクパーティーだとしても命に関わる。魔物が飛び出すリスクがある以上、本来なら警戒すべきなのだ。

 その役割は、いつもはリオとココットとマイの三人が行っていた。ロイスはみんなを先導し、自分は彼の横にひっついているだけだった。


 あぁ、自分って結構迷惑をかけていたんだなとしみじみと思う。

 

 両手に持つ杖を振りかざして、魔法で作った小鳥を空中に解き放った。これで脇の森から何か近づいてきても、いち早く察知することができる。


「サリア……大丈夫?」


 横にいたマイが、話しかけてくる。

 何がと振り向くと、どこか心配そうな表情を向けていた。


「ロイスと喧嘩した?」

「どうして?」

「何か、距離がある」


 その心配ココットにもされたなと、ほおをかいた。


 やはり自分は周りからはずっとベッタリだと見られていたのだろう。指摘されると恥ずかしいが、それも過去の自分なので否定はしない。


「自分の本当の気持ちに気づいただけだよ」

「……本当?」

「本当だよ」


 嘘は言ってない。ただ、本当のことも言ってない。

 自分の記憶に前世が混ざってしまったと言っても、混乱を招くだけである。最悪、頭の診療所に預けられるのがオチだ。


「それに自分勝手でだいぶ迷惑かけたからね、頑張らないと」


 マイに小さくガッツポーズを作る。彼女は少し笑って返してくれたような気がした。



※※※※※※※※※※



 冒険者は往々にして、野宿を強いられるものだ。道の途中でやっている宿屋など、たまにしか見かけない。多くは魔物や盗賊の脅威がある馬車での商売は、リスクにしかならない。


 焚火に木の枝をくべながら、サリアは小さくため息をついた。焼いている肉を見て、苦笑いを浮かべる。


──うん、焦がした。


 野宿料理など初めてで勝手が分からず、火加減を見誤った。自分がどれほど役立たずだったのか、思い知らされた気分だ。

 

「あら〜失敗したのねぇ」


 涙目で座っていると、ココットが隣に腰掛けてくる。


「……結構難しいね」

「慣れてないとそりゃあね?」

「うーん、今まで本当に人任せだったと恥ずかしい限り」


 後頭部をかいていると、彼女がクスリと笑った。


「急になんでも自分でやろうとしなくていいのよぉ? パーティーは役割分担をするためにあるものでしょ?」


 それはそうなのだが、リオとココットがロイスへ夢中になっていたから自分が担ったのだ。

 心の中でそう思うが、口には出さなかった。きっと彼女たちも今までサリアの思ったことだろうから。


「追加の小枝、集めてきた」


 焚火の前で焦げた肉を見つめていると、マイが静かに戻ってきた。両手いっぱいに抱える姿は、仕事を一生懸命手伝っている子ども感があって愛らしい。


「ここは私とマイさんに任せて、サリアさんは水浴びしておいでぇ?」

「……でも」

「残りの肉も焦がされたらたまったものじゃないしぃ?」

「……うぐ」


 図星を疲れて、頭を深く沈める。

 何も言い返せない。


「うふふ、冗談よ。ここは私に任せて水浴びに行ってらっしゃい」

「……うん、そうする」


 立ち上がり、体を伸ばした。こちらを見るマイにも行ってくると軽く挨拶を済ませて、近くにあった川へと向かう。

 その背中に、ココットの独り言がぶつかる。


「サリアさん、少し可愛くなったかしら?」


 それを言われて、男子高校生の記憶が混じるサリアの心境は複雑であった。

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