24話「彼となら」
ヴィヴェルは私の店をこれからも大切にしていきたいと言ってくれた。
それはつまり、二人が同じ意見だということ。
そういうことなら話は早い。なんせ、既に同じ方向を見据えることができているということだから。私たちは現時点で既に同じ未来を見据えられていると言っても過言ではない。ならばいろんな意味で方向性は重なってくるだろう。
彼となら生きてゆける――確信が胸の中で生まれた。
なので私は彼と行く道を前向きに捉え進むことにした。
「ええっ! クリスティアさん、結婚するの!? すっごい!」
「そうなんです」
「おめでとう! もー、とっても嬉しいっ。おめでとおめでとおめでと!」
常連客には結婚のことを伝えた。
敢えて隠すこともないと判断したからだ。
「おめでたいわねぇ」
「そう言っていただけるととても嬉しいです」
「これからも元気でねぇ」
「はい!」
「それで、お店はどうなるのかしら? 閉店……とかだと、寂しいわねぇ」
「引き続き営業します」
「あら! それは嬉しい!」
ヴィヴェルのことは既に知っている人も多い。
なので私が彼と結婚すると言ったとしてもよく分からないというような顔をする者は稀だろう。
「結婚ですか! それは素晴らしい! おめでたす!」
「ありがとうございます」
「お店も継続とのことで嬉しったす!」
「これからもよろしくお願いします」
「そりゃこちらっこそ! よろしっくっす! 純粋な心で祝いたいっんす!」
彼の真面目さや真っ直ぐさは多くの人が知っている。
「幸せになってね、クリスティアちゃん」
「はい」
「いつまでも、ずっと、幸せを願っているから」
「ありがとうございます」
――と、そういった感じで、私たち二人の結婚への第一歩は皆に祝福してもらえた。
「嫌な顔されませんでしたか?」
「はい、大丈夫でした」
「それは良かった。安心しました。もし常連客の皆さんに嫌な顔をされたら、皆さんを不快にしてしまったら、と……少々心配していたものですから」
そのことをヴィヴェルに報告すると、彼は安堵したように笑った。
「受け入れていただけて、とても嬉しいです」
その笑顔を見ていたらとても幸せな気持ちになった。
こうして、今、この笑みが傍に在ること。その価値を改めて強く感じる。このとても愛おしいものに寄り添っていられるありがたみ、それが胸の奥にじんわりと熱を広げてゆくのだ。
彼との道を選んで良かった。
その道を選ぶ勇気を頑張って絞り出して良かった。
今は、ただ、ひたすらに――そう思う。
「母もとても喜んでいます。それはもう呆れるほどに。というのも、もう何日も『素敵な娘ができるなんて凄く嬉しい』しか言わないほどなのです」
安定の良い人だなぁ……、なんて思いつつ。
「喜んでいただけているなら私としても嬉しいです」
「わたしはこの国で暮らしますが母は当面はあちらの国で。しかし母はクリスティアさんに会いに来る気満々です」
「ヴィヴェルさんのお母さまならいくらでも来ていただいて問題ないですよ。とても良い方ですから。私としても、あのような素敵な方に会えるのは嬉しいことです」
◆終わり◆




