よくある勧誘の決まり文句
高校の遠足で、遊園地に行った。四月の終わり、葉桜になりつつある頃だった。
僕は遊園地のアトラクションの定番中の定番、ジェットコースターに乗っていた。
「それではぁ、いってらっしゃい♪」と案内役の女性スタッフに見送られて、僕を乗せたコースターはガタガタ揺れながら空高くへゆっくりと昇っていく。
あたりを見回す。右手に海が見えた。波間が陽光に照らされてキラキラ輝いていた。奥には半島が横たわっていた。素直に綺麗だなと思った。
振動が止まった。ピタッと静止し微動だにしない。僕の胸は高鳴る。束の間の安堵感とこれから先の見え見えの恐怖への怖れ。
そして、来た。刹那のフワッとした浮遊感、枷の外れた重力の恩寵、位置エネルギーの変換、軋むコースター、唸る空気、迫るレール、耳をつんざく誰かの叫び声。
回る。ひねる。吹っ飛ばされる。物理法則の只中、僕は縦横無尽に振り回される。
やがて動は静になる。天下静謐、明鏡止水。僕は高速のなかに心を置き去りにしたような、夢見心地な気分になった。
実体感のない上の空な気持ちなまま出口を通り過ぎると声をかけられた。
「あの、すみません」
一人の少女がそっとチラシを差し出す。
「あなたは神を信じますか?」
「ナニコレ」