千円札で、一万ずつ
私は何も抵抗できなかった。
あ、そうだ。もしかしたら、朝の、竹達くんのあの行動は、私を助けるためだったのかもしれない。もしかしたら、いじめられている事に気付いて話しかけてくれたのかもしれない。
じゃあ、本当に、あの時助けてっていえば、助けてもらえたのかもしれない。思考を読み取って貰えばよかった。そうしたら、どんなことをされているか伝わったのに。
いま、私がどんないじめをされているかは、みんな知らないんだ。まだ助けなくても大丈夫だって思っているのかもしれない。あ、あの飛んできたバスケットボール、私の知っているような声が聞こえたあの時、助けてくれたのは竹達くんじゃないだろうか。
そうか、そうなんだ。私は、私を助けるために差し伸べてくれた手を、払い退けてしまったんだ。
大丈夫って言ってしまった。
そりゃあ、みんな私は大丈夫だって思っちゃう。私が突き放してしまったんだ。気づいた時にはもう遅い。私はただ黙って日向さんたちについて行くしかなかった。プツンと何かが切れる音がした。
思った通り昨日も連れてこられた校舎の四階の男子トイレに着くと、二人の男子生徒が中で待っていた。
「おーっす、嵐央、圭。待った?」
「待ったまった。めっちゃ待ったよ。触らせてもらえるってまじ?」
トイレの中には背の高い短髪の男の子と、茶髪の男の子が私たちを待っていた。今日はこの二人が何かするんだろうか。するなら早くしてほしい。
「おちつけって。私らじゃないよ。ってか私らには触らせません。触っていいのはこいつね」
日向さんが私の背中をごんと押して、その勢いで二人の男の子の前に飛び出た。
「うわっ、結構可愛いじゃん。眉毛太いけど髪の毛ロングでいい感じ」
「胸ちっさそうなのが残念だなー。でもそこらの女子より可愛いじゃん」
よくわからないけれど、知らない男の子に可愛いと言われても嬉しくない。またおしっこを飲むんだろうか。この二人の。飲めばいいんでしょ。だから早くしてほしい。
「たかしっていう、男みたいな名前だけどな。もしかしたらオカマかもしんないけど」
「いや、もしオカマだったとしても全然ありだわ」
「そ? じゃあ早速始めますかー。瑠子、きい、たかしちゃん暴れないように掴んでて」
「はーい」
「任せて」
私をトイレの奥に追いやって、両腕を掴まれた。これでもう抵抗できない。けれど、私にはもう抵抗する気もない。早く終わってくれればそれでいいから。流れる時間に身をまかせるしかなかった。抵抗さえしなければ、蹴られたり、殴られたり、痛い事をされないだろうから。
おしっこ飲まされるのは嫌だけど、でも、ただおしっこを飲むだけで解放されるから。ただ言われたことをするだけでいい。そうしよう。それでいい。
「ほいじゃ、二人とも持ってきた? 千円札で、一万ずつ」
二人の男の子はカバンから封筒を出した。日向さんがその中身をパラパラと確認する。
「八、九……十。はい、ちょうどね。じゃあまずは」
えっ。
日向さんは私のセーラ服の前チャックを下ろした。その後にチャックの開いたセーラー服を開いて見せた。もちろん、私は今、ブラジャーが顕になっている。目の前に知らない男子がいるのに、制服を脱がされている。流石に恥ずかしい、だけど、抵抗する気力が起こらない。こんなにも恥ずかしい姿を見られているのに、感情が全然動かなかった。
今この状況にいるのは私のせいなんだ。じゃあ耐えるしかない。無理やり手や足を動かして痛いことをされるのも時間がかかるのも嫌だ。もう諦めてじっとしていた方がいいんだ。お腹を見ると、大きな青い痣ができていた。昨日今日と何度も蹴られたからだと思う。
「うわ痛そー、お腹痣になってんじゃん。これ私が蹴った跡でしょ? かっわいそうー。 まいっか、スカートも脱ごうねー」
私はどんどんと脱がされていく。無理やりセーラー服も脱がされて、ついに下着姿になってしまった。今、私はこの二人の男の子たちの見せ物にされている。男子の二人は目を輝かせながら私の事を見ていた。目線と顔がとても気持ち悪かった。
「なあ、触っていいんだよな!」
「いいよ。上だけね」
「やべえー! 柔らかっ! めっちゃ気持ちい」
私の胸を下着の上から揉みながら、短髪の男の子が声を上げた。




