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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと日向芽有
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これで、大丈夫

「ただいまー。お母さん! 傘家に忘れちゃってびしょびしょになっちゃった!」


 私は作り笑顔でそういった。なんだかいつもより笑顔が作りやすいような気がした。パンツのことは絶対にバレないようにしないとと思った。


「ああもう、先生に借りられなかったの?」

「あっそっか! 先生に言ったら貸してもらえたのかな」


 そうか、先生に借りればよかったんだ。


 ……じゃなくて、私は雨で濡れたんじゃないんだった。これはお母さんには内緒なんだ。風も吹かないのにスカートを押さえてしまう。バレてしまうんじゃないかと心配になる。


「そりゃー傘くらい貸してもらえるわよ、ほら、もうそこで脱いで。お風呂入ってらっしゃい。まさか明日も濡れて帰ってくるとか言わないでしょうね。本当にいじめられてないの? 昨日も泥だらけで帰ってきたし……」

「え、ここで脱ぐの?」


 それは絶対にできない。パンツ履いてないのがバレてしまう。


「こんなところで脱いで天に見られたらどうするのさ」

「本当の本当にいじめられてない? 天くんなら今友達の家に遊びにいってるから大丈夫。まだ帰ってこないから」

「本当の本当だって! いじめられてないよ! 今日だってきらなちゃんすごいんだよ。数学得意で小テスト一人だけ満点だったんだもん。私は数学苦手だから羨ましいや」

「はいはい、わかったから早く脱いで入ってしまいなさい。風邪ひいちゃうから」

「このままあがっちゃだめ?」

「そんな格好で入ったら家がびしょ濡れになっちゃうから脱ぎなさい。セーラー服はそこに置いておきなさいね。お母さんがパジャマ取ってきてあげるから文句言わないでさっさと脱いでさっさと入る」


 どうしよう、どうすればいいんだろう。


「お母さん……居間に行ってて。恥ずかしいから」

「何言ってんの、下着姿なんていつも見てるじゃない」

「なんか恥ずかしいの! だから居間に行ってて!」


 だって、私、今パンツ履いてないから。いまセーラー服を脱いだら見つかっちゃう。そしたらなんでパンツ履いてないんだってなっちゃう。


「はいはい、わかったから早くしなさいね、風邪ひいちゃうわよ」


 お母さんは居間に入って行った。


「絶対こっち来ないでね」


 セーラー服の上の脱いで、靴下も脱いだ。


「絶対の絶対だからね」

「はいはい、行きませんよー」


 スカートを素早く下ろして、家に上がった。


 ペタペタ早足で廊下を早足で歩いて脱衣所に行き、ブラを脱いでお風呂場に入った。よかった。バレなかった。脱衣籠の中、ブラだけになってるなあ。パンツがないとお母さんが不思議がっちゃう。どうにかしないと。


 急いでお風呂に入った。いつもしているトリートメントを今日はしなかった。お風呂から出て脱衣所に行くと、まだ洗濯機は回されていなかった。よかった……。洗濯機の上にはパジャマと下着がきちんと置いてあった。


 そうだこのパンツを濡らして……。


 だめだ、このパンツのこと、お母さんが覚えてるかもしれない。上から新しいパンツを持ってこないと。私はパパッと着替えて、早足で自室に入った。

 引き出しから新しいパンツを取り出して、脱衣所に向かった。大丈夫、脱衣所にお母さんはいない。私は水道でパンツを濡らして、ブラの下にパンツを置いた。


 これで、大丈夫。バレない。よかった。怖かった……。


 私は自分の部屋に戻って床に座った。


 明日、ここちゃんとか阿瀬君とかに相談してみようかな……。竹達くんとか縫合くんも、隣のクラスだけど助けてくれるかもしれない。


 あ……、でも、みんな楽しく遊んでいるしな……。みんなにあんまり心配もかけられない。うん。まだ一人で全然耐えられる。大丈夫。あと三日だもん。きらなちゃんが来た時には、何事もなかったみたいに笑って待ってよう。きらなちゃんが来たら、いじめも止まるかもしれない。だって、きらなちゃんと遊んでる時は、いじめられなかったもん。そうだ、きらなちゃんが来るまでの辛抱だ。


 おしっこを飲まされるのも。パンツを脱がされるのも。そんなこと、されなくなるんだ。私はご飯の時間まで宿題をする事にした。

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