今さ、おしっこ出るやついる?
飲ませられたら勝ちってなに?
私は勝ってもいいの?
私の勝ちってあるの?
これは私の負けが決まったゲームなの?
「抵抗すんなってば!」
思い切りほっぺたを平手打ちされた。ジンジンして痛い。痛くて涙が出る。
嫌だ。負けたくない。
「ほら、もう叩かれたくないでしょ? 諦めなよ? ね?」
そんなに優しく言われても嫌だ、絶対嫌だ。そんなもの飲みたくなんかない。
「仕方ないなあ。行くよー」
コップを持った日向さんが私の鼻をつまんだ。必死に口をつぐんでいるから息ができない。そうか……。日向さんの意図がわかって。抑えられていない足をバタつかせて日向さんを寄せ付けないようにした。両腕を必死に振って、足をバタつかせて、抵抗する。逃げないと。逃げないといけない。
飲みたくなんかない。
「いって。こいつ蹴りやがった」
逃げようと、振り解こうとしてバタつかせた足が日向さんの足に当たった。そんなに強くは当たってない。ほんの少し掠った程度だった。それでも日向さんは私のことをギロリと睨むと私の鼻から手を離して、大きく足を振って私の腹部を蹴り上げた。もちろん痛かった。痛くて痛くてたまらなかった。
「うっあ」
今すぐお腹を両手で抑えたいのにそれもできない。痛みは意識の中心に浮かぶように私を苦しめた。抑えることも、抱えることもできずただ咳き込んだ。
「はーい飲もうね」
お腹の痛みで動けない私の鼻をもう一度つまんで顔を上に向けた。口も閉じて、鼻も塞がれて、息が苦しくなって、仕方なく口で息をしたところに日向さんはコップの水を流し込んだ。咳をしながら、私はトイレの水を大量に飲み込んだ。気管にも入った。鼻からも出てきた。味も匂いも何も分からないけれど、涙が溢れてくる。
「がばっ、ぐくっ。ごくっ」
「あははは、飲んでる飲んでる」
三人は大きな声で笑い声をあげる。その声を聞いて、見張りに行った梁さんが慌てて戻ってきた。
「なになに?」
「こいつ便器の水飲みやがった。汚ねえー」
「え、汚―い」
「もう一杯言っとく?」
「それさんせー」
「今度は私も見たーい」
咳き込んで吐きそうな私の周りで楽しそうに四人がはしゃいでいる。
親友ってなんだろう。
本当に、この人たちとは友達になりたくない。こんなことする人たちと仲良くなんてしたくない。こんなことを考えつくような人と、知り合いになることも嫌だ。
「何、何睨んでんのお前」
いつの間には私は彼女達のことを睨んでいたらしい。思いっきり顔をぶたれた。
「私たち友達でしょ? そんな顔されると怖いなあ私」
友達がこんなことするか。と思ったけれどすぐにその考えを飲み込んだ。また無意識に睨んでしまったら顔を叩かれてしまうかもしれない。もう飲んだからいいじゃないか。早く解放してほしい。早く帰りたい。日向さんたちはいつまでこんなことを続けるつもりだろう。
「ちょっと、もう一回汲んできて。より汚そうな水選んでね」
もう一度やられるんだ。
嫌だ、嫌だ。
……そうだ、心を殺そう。さっきも飲んだんだ。もう一回飲んだら二回も三回も一緒だ。そうだ。おんなじなんだ。
「んお! ちょっと待って! 私いいこと思いついたかも! 天才かも!」
日向さんが閃いたと手を叩いた。嫌な予感がした。もう何も思い付かないでほしい。私は今もう汚いトイレの水を飲むことを覚悟したんだから。それ以上のことはやめてほしい、お願いだから、やめて。
「今さ、おしっこ出るやついる?」




