待って、私待って
「蹴人とかは駄菓子買ったの?」
「俺と一は買ったよ。忠は買ってないから今から買うらしい」
「と言うことで失礼しまーす」
竹達君が入ってきた。なんか緊張する。
「金子さん、お会計お願いします」
私は慌てるように金子さんを呼んだ。たこ焼きを焼いていた金子さんは私に呼ばれてこっちを向いた。
「はい、百四十円ね」
金子さんはお婆ちゃんなのに値段も見ずに、お会計をした。多分全部の商品の値段を覚えているんだ。すごい。
私は百五十円渡して、十円のお釣りをもらった。そして、逃げ出すように駄菓子屋を出た。
「お、たかし、たこ焼き食うか?」
「うん、食べる」
外には私と阿瀬君と縫合君だけ、これはこれで緊張する。
「なあたかし、忠のことどう思ってる?」
えっと、これは、彼氏とかそう言うことかな。もう、お母さんのせいで思考がそっちにいってしまう。私はまだ恋人なんて全然わからないのに、友達だってまだ全然わかってないのに。
「えっと。えと、す……」
待って、私待って。好きだよ。でも、それは阿瀬君も縫合君も好きだ。きらなちゃんもここちゃんも好きだ。そう言う好きだ。友達として。どう思ってるって言われたら、好きだと思う。でも、今そう返事をしたら、全然違うことになりそうな気配がする。
「す、すごくいい友達だって、思う……かな?」
「なるほどな」
よし、これで大丈夫。なんか危なかった。人生の危機だった。そんな気がする。
ここちゃんが袋を携えて金子さんから出てきた。次はきらなちゃん、その次は竹達君。よかった、なんだかわからないけれど助かったと思った。
「じゃあ、たこ焼きください」
「ええっと、一人前が六個でいいのかい?」
「うん、お会計はバラバラだけど」
「じゃあまずは一つ目ね……」
金子さんは器用にピックを使ってプラスチックの容器に六個ずつ入れてはお会計をした。
「毎度ありー。またきてね」
金子さんは屋台の向こうでお辞儀をした。私もゆっくりとお辞儀をした。
「じゃー公園戻って食おうぜー」
阿瀬君の声を号令に、みんなが一斉に走り出した。
わ、わわわ、あつあつのたこ焼きを片手に走るのはとても難しかった。
みんなの姿が見えなくなる。私が公園に着いた時、もうみんなは公園の中央にある東屋に座っていた。
「はぁ、はぁ」
私は息を切らしながらようやく東屋に辿り着いた。
「あれ? みんな食べてないの?」
「たかしちゃんを待ってたのよ。ほら、座って座って」
きらなちゃんの横に腰を落ち着けた。みんな待っててくれたんだ。とても嬉しかった。
「じゃ、いただきまーす」
みんなで一斉にたこ焼きを食べた。そういえばここちゃんはブタメンどうしたんだろう。
「ここちゃん、ブタメンは?」
「んー、たこ焼き食べるから諦めた」
そうなんだ、諦めたのか。ふふふ、あんなにブタメンって言ってたのに、ちょっと面白い。
「ちょっと、たかしちゃん、こっち向いて」
「んっ」
きらなちゃんが私の口元をハンカチで拭いてくれた。口の横にソースがついてたんだ。恥ずかしい。でも、ハンカチ汚しちゃったな。
「ハンカチ、ごめんね」
「いいのいいの、洗えばいいんだから」
ハンカチ……、そうだ。御城さんは今、どうしてるかな。話したい、こんなにいっぱい友達ができたってお話をしたい。みんなは御城さんのこと知ってるかな。でも病院はここから結構離れてるか知らないかもな。でも、聞いてみてもいいかもしれない。何か手がかりが掴めるかもしれない。
「あのね。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「なに? どしたの?」
「御城麗夏ちゃんって、学校にいない?」




