私の作ったぬいぐるみ……。
「ちょっと、お財布とってくる」
私は早足で家に入って、靴を脱ぎ、階段を登った。机の引き出しを開けて、赤いチェックの折りたたみ財布を手に取った。中身を確認する。
うん、お金入ってる。大丈夫。
軋む階段を早足で降りていると、お母さんが居間から顔を出した。
「あら、たかしちゃん。帰ってきたの?」
「ううん、お財布取りに来ただけ。金子さん行くの。」
「そっか、行ってらっしゃい」
そうだ、お母さんに聞かなくちゃ。
「ねえ、お母さん。金子さんで百円以上使っていい?」
「ん? いいよ? なんで?」
「なんでって、お母さんが百円までって言ったんじゃん」
「あははは、昔の話ね。ちゃんとお金の管理ができるようにっていう練習よ。たかしちゃんはもうお金の管理はできるようになったんだから。いくらでも使っていいわよ」
そ、そうだったんだ。なんだ。てっきりずっと百円までだと思っていた。でもこれでたこ焼きとかたこせんとか買える。二百円なんて百円じゃ買えないもん。
「じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
ガラガラと引き戸を開けて外に出た。みんなまってくれていた。それだけでとても嬉しかった。
「お待たせ?」
なんだか竹達君がソワソワしていて、阿瀬君と縫合君に肘で突かれてる。きらなちゃんはブンむくれで腕を組んでいる。
「どうしたの? 何かあった?」
「いやな、忠がたかしの作ったぬいぐるみを見たいそうなんだ」
私の作ったぬいぐるみ……。
「でもな、そうすると、綺羅名が今度は、私もまだたかしちゃんの部屋に入ってないのに先に入ろうって言うの? って怒り出して」
えっと、だから、どうすればいいんだろう。作ったぬいぐるみはいっぱいあるし、全部は持ってこれないから二つくらい持ってこればいいのかな。それとも。みんなを部屋に呼べばいいのかな。でもみんなは入れないなあ。階段も底抜けちゃうかもしれない。
「たかしちゃん。ちょっとだけ、部屋入っていい?」
きらなちゃんが私の手を握ってお願いをした。可愛くて、いいって返事しかできないような気がした。
「えっと、いいけど。全員は入れないかなあ」
「ああ、いいよ、俺たちは外で待ってるから。てか先に金子行ってるわ」
「僕も入りた……」
「よーしここも金子に行こうなー」
「じゃ、お前も行ってこいよな」
阿瀬君に押されて竹達君が転びそうになった。
「お、俺も入っていいのか?」
竹達君が私に聞いた。
男の子を部屋に入れるのはとても恥ずかしかった。でも、竹達君とぬいぐるみのお話をしたいとも思った。私の作ったぬいぐるみを見て、なんて言ってくれるのか気になった。
「うう、い、いいよ」
頑張った。私は初めてお友達をお部屋に招く。それが、男の子だなんて、大人だって思った。
二人を連れて、もう一度玄関の引き戸を開けた。
「こっち、靴脱いで」
「お邪魔しまーす」
二人は声を揃えながら玄関をくぐった。




