駄菓子屋は百円まで
「いや、俺は金子でお菓子でも買って食べようかなって思ってた。帰るの面倒だし」
竹達君が言った。
「やっぱそうなるわよね。じゃあ今から向かわない? もう十二時になるし。どうせみんなもそうするんでしょ」
「そうするそうする」
みんなで駄菓子屋さんか。とっても楽しそう。
あっ。
お金持ってきてない。どうしよう。
「きらなちゃん、私、お財布持ってきてない……」
「あはは、たかしちゃんの家は近くなんだから取りに帰れるでしょ」
あ、そっか、そうだった。忘れてた。
「お、そうなの? 金子の近くなの?」
「そうなのよ。みんなたかしちゃんの家の前通ったことあるのよ。不思議でしょ」
「あの近くに高橋なんて名前の家あったっけ?」
「えっと、おばあちゃんのお家だから。表札は『柴』になってます」
「うん、聞いてもわからん」
「ま、とりあえず行こうぜー。ちょうど腹も減ってきたし」
「そだね」
みんなでぞろぞろと歩いて公園を出た。
「みんなでブタメン食べようよ」
「ここ本当ブタメン好きな。でも確かし腹減ってる時にはありだな」
「たこせんは? たこ焼き焼いてもらってさ」
「あー、それもいいな。金子のたこ焼きうまいんだよな。しかも安い。六個二百円。たこせんもたこ焼き三個入ってて百五十円だもんな」
「ブタメンは六十円だよ」
「安いよなあ。駄菓子ってマジで夢が膨らむよな」
「駄菓子屋さんって百円までじゃないの?」
私が言うと、みんなキョトンとした顔をした。
「百円って、何にも買えないじゃん」
「むしろ百円超えてからが勝負じゃん?」
そ、そうなんだ。
「私、小さい頃から駄菓子屋は百円までってお母さんに言われてて、ずっと百円までで買ってた」
「まじ? たよんなくね?」
「うん、だから。量が多いのとか、長く食べれるものばっかり買ってた」
「たかしちゃん、今日はいいのよ。たんと買いましょ。みんなでいっぱい買って、公園でパーティーしましょ」
「いいのかな……」
「いいのよ! なんならお母さんに聞いてみたら? 絶対いいよって言うから」
「うん、聞いてみる」
竹達君に頭を撫でられた。
まただ。また撫でられた。なんか馬鹿にされてる気がする。私はキッと竹達君の顔を見た。
「いや、別にそんな馬鹿になんてしてねえよ」
はっ、また心を読まれた。
竹達君はエスパーなの?
頭を触って思考を読み取ってるの?
今度は竹達君顔を見て、やっぱり晩御飯はシチューがいい。と思い浮かべてみた。
「ん?」
竹達君には伝わらなかった。なんだろう、なんで頭を撫でるんだろう。そういえばさっき、私のことを可愛いとかなんとか言ってたなあ。それと関係があるんだろうか。
でも、別に竹達君に頭を撫でられるのは嫌じゃなかった。男の人に撫でられるのはお父さん以外で竹達君だけだけど、ちょっと嬉しい。恥ずかしくはあるけど、私よりずっと背の高い、大人の男の人になんだか可愛がられてるみたいで、照れるけど、嫌な気はしなかった。
でもなんかムッとする。むずむずする。なんで撫でるんだろう。
そうこうしているうちに私の家の前についた。




