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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんときらなちゃん
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だけど、答えは一生わからない

「ただいま」

「おかえりー。全然帰ってこないから心配してたんだよお。何してたの? いじめられた?」


 お母さんが玄関でわたわたしていた。いつもはホームルームが終わって四時ごろには帰ってくる私が六時過ぎまで帰ってこなかったことを心配したらしい。

 確かに、二時間も遅かったら私も心配すると思う。


「ごめんなさい。入部体験してたの。天文部に入部しようと思ってて。あ、お母さん、これ、書いてくれる?」


 私は玄関で靴も脱がずにカバンの中から入部届を取り出してお母さんに渡した。


「そっか、よかった。帰り道で何かあったのかとか学校で何かあったのかとかいっぱい考えちゃった。でもたかしちゃんが元気そうでよかった。部活動に入るのね。天文部? 吉良さんと一緒?」

「はっ、なんでわかったの。そう、きらなちゃんと一緒なの。活動は火曜日と金曜日だって、それから……」

「わかったわかった。お話は聞いてあげるからまずは靴を脱ぎなさいな」

「はっ、そうだった。はーい」


 私は靴を脱いできちっと揃えてから、話したい気持ちを抑え込んでまずは自分の部屋に戻った。


「楽しかった、楽しかった」


 私は部屋に入って、しっかりと戸を閉めてから足踏みをした。

 今度は後輩ができた。しかも三人も。


 ひびとくん。


 そらくん。


 あーるちゃん。


 あーるちゃん、可愛かったなあ。


 ひびとくんと、そらくんは、あんまりみられなかった。やっぱり男の子だと緊張する。でも、お話しはできた。頑張った。自分、偉い。


 ぴょんぴょん飛び跳ねると、床がギシギシ言った。床が抜けるかもしれないと思って慌ててやめた。


 セーラー服から部屋着に着替えて、居間に行った。居間にはおばあちゃんだけが座っていて、お母さんが忙しそうに晩御飯を作っていた。


「なんか手伝おっか?」

「うん、じゃあおかず運んでくれる?」


 私はキッチンからそれぞれのおかずを運んで、みんなの場所において行った。今思ったけれど、キッチンというよりも、台所って感じだ。うん、こっちの方がしっくりくる。なんで今まで気づかなかったんだろう。リビングは居間だし、部屋のドアはドアじゃなくて戸なのに。馬鹿だな、私。ふふふ。


 今日のご飯はトンカツだった。


「たかしちゃん、天ちゃん呼んできてくれる?」

「はーい」


 また階段を登って、私の隣にある部屋の戸をノックした。


「天―、ご飯だよー」

「はーい。わかったー」


 これは寝転がっている声だな。多分ゲームしてる。私は予想をした。だけど、答えは一生わからない。この戸を勝手に開けないから。


 階段を降りて、居間に戻ると、お母さんが炊飯器を隣に置いて座っていた。


「大盛」


 今日はいっぱい食べよう。楽しいことがいっぱいあったから。


「はーい。はいどうぞ」

「ありがとう。いただきます」


 おばあちゃんはもう食べ始めていた。私も食べ始めると「大盛」と言いながら天が入ってきた。


「はいはい」


 お母さんは天のお茶碗にこんもりとご飯を盛った。大盛りと言っても、私の大盛りと、天の大盛では全然違う。私の方が全然少ない。天はよく食べるなあ。私には無理だ。


「そうそう、そんでね、天文部なんだけど」


 私はさっきの玄関の話の続きを始めた。


「夏休みになると、学校にお泊まりをして、みんなで星を見るんだって!」

「へえー。それは凄いわね、楽しそうだけど、お母さんは寂しいわ」

「たった二、三日じゃん。我慢しなさい」

「はーい」

「それとね、後輩ができたんだよ。私先輩になっちゃった」

「そうなんだ。大丈夫? 怖くない人?」

「全然怖くないよ! ひびとくんとそらくんは男の子で、話すのちょっと緊張するけど、あーるちゃんは女の子でね、ハーフなんだって。アメリカ人のお父さんがいるらしい。でもね、顔はあんまり外国人っぽくないから、髪色黒くすると言われないとハーフって気づかないかも。でね、そのあーるちゃんがね、火星人が好きで、火星人のストラップもらっちゃった。タコはあんまりなんだって。それからきらなちゃんが言うにはタコは墨を吐くから火星人じゃないらしいの。ふふふ、おかしいでしょー」

「ふふふ、面白い人たちだねえ」

「うん! すっごく楽しい」


 多分、いま、嘘をついて話していた時とは比べ物にならないくらいテンションが高いと思う。今までの嘘がバレちゃうと思う。多分、もうバレてる。でもいいんだ。だって、楽しいから。


「それからね、明日朝の九時からきらなちゃんと公園で遊ぶ約束したから、今日は早めに寝るね。寝坊しそうになったら起こしてね」

「はいはい。八時半まで寝てたら起こしてあげるね」

「三十分じゃだめ! 一時間前! 八時!」

「八時ね。わかった」


 と言いながら、ご飯をいつも通り食べて、お風呂に入ると、もう九時になってしまった。


「あ、そうだ」


 今のうちに、忘れないように友達ノートを明日使う肩掛けカバンの中に入れた。ノートを入れるからちょっと大きな肩掛けカバンになっちゃったけど、この鞄もお気に入りだからいい。


 宿題は明日やろう。


 私は目覚まし時計をしっかりセットして眠りについた。


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