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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんときらなちゃん
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いじめられたんだ

「ほんっとにごめんね! 明日もたかしちゃんと会えるんだって思ったらワクワクしすぎて昨日の夜全然眠れなくってさ。寝たの三時! そんで起きたら八時回ってたよー、ほんとにごめん。約束破っちゃった。心細かったよね? 絶対そうだよね。私なら絶対寂しいもん」


 一時間目が終わった休憩の時間に、きらなちゃんはすっごく謝ってくれた。目はうるうるしていて、今にも泣きそうなぐらい、謝っていた。


 よかった。きらなちゃんは今日も私と友達でいてくれるみたいだ。


 安心して泣きそうになる。涙をグッと堪えた。


「たかしちゃん、泣いてた? 目が赤いよ? やっぱ私のせいだよね。ごめんね、ごめんね」


 違うんだ。違うんだきらなちゃん。さっき、さっきね。


 いじめられたんだ。


 こんなにも心配してくれるきらなちゃんにあんまり心配かけたくないなあ。そう思う自分がいるのに、きらなちゃんの声を聞くと心が堪えきれなかった。普通にきらなちゃんと話しているはずなのに、涙が溢れて止まらなくなった。


「きらなちゃん。あの。えっと」


 ボロボロと泣く私を見てきらなちゃんは心配してくれた。


「どうしたの。なんかあったの」


 自分とは別の何かがあったのを察して、私の頭を撫でてくれる。さっきまでズキズキと痛んでいた心がどんどんと温かくなる。友達になっていきなりこんなこと相談されたら嫌われるかもしれない。でも、相談したい。きらなちゃんなら解決してくれる気がするから。


「さっきね、日向さんたちが来たの……」

「芽有たちが?」

「うん、そんで、私の前髪を引っ張って、お前なんか嫌いだって、気持ち悪いんだって、言われたの。それが、それがね……」


 最後まで言葉にならなかった。悲しい、辛い、私はいじめっ子に目をつけられてしまった。直接嫌いだと、気持ち悪いんだと言われた。


「たかしちゃん、たかしちゃんは気持ち悪くなんかないよ」


 きらなちゃんがそっと抱きしめてくれた。

 何か汚いものが洗い流されるような、そんな感覚を感じた。


「きらなちゃん」

「大丈夫。たかしちゃんは私が守ってあげるから」


 私の体をぎゅっと抱きしめてきらなちゃんは言った。


「私、もう遅刻しない。たかしちゃんから離れない。芽有たちからは、私が守ってあげる。約束ね」


 きらなちゃんの声は真剣で、頼もしかった。日向さんたちのことは怖いけれど、きらなちゃんがいれば大丈夫だ。そう思った。


 お昼休み、きらなちゃんと給食を食べていると、雲藤先生が声をかけてきた。


 昨日もきらなちゃんと給食を一緒に食べたけれど、とっても楽しい。学校で誰かと一緒にご飯を食べるのが、こんなに楽しいとは思わなかった。明日も明後日も、毎日きらなちゃんとご飯が食べられると思うと、心が穏やかになる。


「おい高橋、聞いてるのか?」

「は、はい」


 きらなちゃんとのお食事会に気を取られて先生に声をかけられていたことをすっかり忘れていた。


「あのな、高橋、そろそろ学校にも慣れて来ただろ? うちは全生徒部活に入る決まりになってるんだ。そろそろ入る部活を選んでくれ。入部体験もできるから放課後色々回ってもいいかもしれんな。これが入部届だ。よろしくな」


 突然、雲藤先生に言われて部活を決めることになった。もしかしたら、雲藤先生は、私に友達ができるのを待ってくれていたのかもしれない。わかんないけど、もしかしたらそうかもしれない。

 雲藤先生のことが、ちょっぴり好きになった。何かあったら助けてくれるかもしれない。そう思った。


 それからきらなちゃんに部活動の相談をする事にした。


「ねえ、きらなちゃん。私、前の学校じゃ部活動入ってなかったらか、どれにしていいかわかんないの」

「そうなの? じゃあさっき教司も言ってたし入部体験ってやつやってみる? 私も一緒についてってあげる! てか楽しそう! 部活体験!」


 相談すると一緒に体験に来てくれることになった。


 というか、きらなちゃんの方がノリノリだった。

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