そんな友達みたいなことしていいの?
きらなちゃんは知らないところで右に曲がった。不安になりながらついていくと、いつも通っている知っている道に出た。
「あそこ曲がったら、ここに繋がってるんだ。私、ここからなら道わかる。こっち」
今通ってきた道は気にはなっていたけれど、通ったことはなかった。今度は私がきらなちゃんの手を引いて歩いた。
「ねえねえたかしちゃん。明日の朝さ。さっき曲がったところで待ち合わせして、一緒に学校行かない?」
「えっ」
いいの?
一緒に学校に登校するなんて、そんな友達みたいなことしていいの?
「だめ?」
「い、いいよ。一緒に学校行こ」
きらなちゃんは繋いでいる手をブンブンと大きく振った。
「いえーい、たかしちゃんゲットー。いっつも私一人で通ってたからつまんなかったんだよねー」
「そうなんだ」
私は歩くのを止めた。家の前についたからだ。だけど、さっきの可愛いお家を見たら、なんだか古い瓦屋根の家は恥ずかしく思えた。
「ん? たかしちゃん、どうかした?」
私が急に立ち止まったせいできらなちゃんが先行してお互いの手がぐいーんってなった。
「えっと、あのね……」
「なになに、どうしたの。大丈夫?」
「笑わないでね。うち、きらなちゃん家みたいに可愛くないから……」
「あはは、何それ。可愛い家ってなによー。笑わないよー、家は家でしょ、住む場所なんだから。住めれば良いのよ」
きらなちゃんは本当にそうだと言わんばかりに大きな声で笑った。
「あのね、ここ、私の家」
一歩引いて、瓦屋根の古民家を指差した。恥ずかしい、もっと、可愛い家がよかった。
「おおー! すごい! おっしゃれー!」
「え、ええ?」
「おしゃれだよたかしちゃん! かっこいいじゃん。私こんな古いお家住んだことないよ! ドラマみたい。そっかーここだったかー。じゃあ金子さん行くときに何度も通ったことあるね。知らなかったなあ。私たち、家近いね。よかったね!」
よかった。よかったのかな。
「だって、いつでも遊べるよ! 帰る時間なんてほとんど考えなくて良いから最後までずっと遊べるんだよ! やったあ」
「そっか。そうなんだ」
きらなちゃんに言われて、なんとなくそうなんだと思った。まだ友達というものをちゃんとわかってないのかもしれない。きらなちゃんに追いつけるのはいつになるだろうか。早く追いつきたい。心から楽しみたい。
「あの、きらなちゃん」
「なに?」
「うち、入る?」
私は頑張ってみた。部屋はそこまで散らかってないけれど、自分の部屋に誰かを入れるのは初めてで、心臓がバクバクなった。
「うーん……。いや、やめとく。せっかくだから休みの日にたっぷり遊びたい。それまではとっとく」
「そっか」
安心したような、悲しいような、複雑な気持ちになった。そっか、きらなちゃん、来ないんだ。帰っちゃうんだ。
「よーし、たかしちゃんの家も教えてもらったし。私は帰ろっかな」
「うん、きらなちゃん。ありがと」
「あはは、私は何もしてないよ。あ、さっきの約束覚えてる? じゃあ、あそこの交差点で七時四十五分に待ち合わせね!」
「うん、約束!」
「じゃあねー」
きらなちゃんは振り返って帰っていった。さっき来た道をまた戻るんだ。
お友達ができた。明日の約束までした。私は一人じゃない。友達ができたんだ。
すっごく嬉しくて、しばらくその場でちいさくガッツポーズをしていた。




