三年A組の教室にも、ゆうこちゃんはいなかった
十月十五日、随分と前にテストも終わり、先週、文化祭と合唱コンクールも終わった。文化祭は学年ごとに巨大なモザイクアートを作った。出来上がったものを見た時、私は感動した。合唱コンクールはきらなちゃんとここちゃんと頑張ったけど、残念ながら銀賞だった。二つとも、クラスの一員になれた気がして嬉しかったし、楽しかった。
「私、今日も先輩のところ行かないといけないの」
お昼休み、給食を食べ終わってゆうこちゃんは席を立った。
ここ最近ゆうこちゃんが休み時間に一人でチア部の先輩の所に行くようになった。
私たちは様子が少し変だなあと思いつつも、ゆうこちゃんにも部活はあるし何も言うことはできなかった。
「今日も行くの? 最近お昼休みゆうこちゃんいないからさみしい」
「ごめんね。今日も部活の相談。私が入って陣形とか変わるからそれの」
「そっか。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
ゆうこちゃんはとぼとぼと、あまり力なのない様子で教室を出て行った。ゆうこちゃんの姿が見えなくなってしばらくして、きらなちゃんがこそこそ声で話しかけてきた。
「ねえたかしちゃん。やっぱり変よね。テスト終わってからずっとじゃん。そんなに先輩と相談事あると思う? もしかして私たちのこと嫌いになったのかしら」
「ええ、やだ。嫌いになんて……」
「嘘よ、嘘。そんなわけないわ。でも気になるわねえ」
「うん、気になるね。私、もっとゆうこちゃんと話したい」
「何ならつけてみる?」
きらなちゃんがかけてもないのにメガネをくいっと上げる仕草をした。
「ええ、でもプライベートだし。つけるのはあんまり良くないんじゃ……」
「じゃあたかしちゃんは気にならないとでも? あんなに仲良くしてたじゃん。テスト前のお泊まり会だって楽しかったでしょ?」
「うん、楽しかった」
ゆうこちゃんがCD持ってきてくれて、みんなで聞いたんだ。
「それがあの態度よ? なんかおかしくない?」
「た、確かに気になるけど……。でも、つけたりなんてしたらダメな気がする」
「文化祭も、合唱コンクールも、いっしょに頑張ったじゃん。親友の証だってあるんだよ?そんな私たちに隠し事なんて酷いわ!」
「まだ隠し事って決まったわけじゃないよう。だって部活の先輩とお話があるって言ってたし」
「うーん、でも気になるわ。私、チア部の先輩に知り合いがいるの。ちょっと聞き込みに行ってみましょ」
きらなちゃんは立ち上がって私の手を引っ張った。
「もう、きらなちゃん。そんなことしたらだめだよう」
と言いつつも、私もゆうこちゃんのことが気になって、きらな
ちゃんを強く止めることができなかった。
下の階の三年生のクラスの廊下を通る。先輩がいっぱいいるからちょっと怖い。
三年C組の教室の前に着くと、きらなちゃんは体を半分だけ入れて、先輩に声をかけた。
「友亜先輩いますか!」
「友亜は私だけど……あ、きらなっちじゃん。どうしたの? めずらしいね」
「えっと、優子……。根波優子の事聞きたいんですけど」
「ああー、優子っち? 同じクラスなんだっけ。どうしたの?」
「最近先輩と話があるって言って私たちと遊んでくれないのでさみしくって。どこにいるのかなあって思って」
「先輩と話? 優子っちこないだ部活来たと思ったらまたいまはずっと休んでるよ?」
え、休んでる?
「優子部活休んでるんですか?」
「うん。テスト終わりくらいからずっと。あー、でもテスト終わってから二日位は来てた気がするなあ」
「じゃあ先輩と話って?」
「うーん、そんなことしてないと思うなあ。私部長じゃないからわかんないけど、なんだったら部長のとこ連れてってあげよっか?」
「お願いします」
ゆうこちゃん、部活休んでたんだ。どうしたんだろう。
友亜先輩に連れられて、三年A組に行った。
「部長ー。ちょっと聞きたいことがあるんですけどー!」
三年A組の教室にも、ゆうこちゃんはいなかった。
「なになに。友亜めずらしいね、どうしたの?」
「えっとね、この子達優子っちの友達なんだけど、最近部活の先輩と話すからって優子っちがいなくなるんだって。話し合いとかしてる?」
「ううん。してないわ。優子ちゃん最近来てないよね。こないだ久しぶりに来てくれた時は嬉しかったんだけど、何かあったのかな」
「そうですか……。わかりました。ありがとうございます」
「あ、優子ちゃんにあったら、また部活来てねって言っておいて。私たち待ってるからって」
「はい。伝えておきます。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
私たちは深々と頭を下げて、教室に戻った。




