表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと新しい学校
29/275

それを呆気なく壊していった

 びっくりし過ぎて、涙も出なかった。


 一応、犯人を探すようにして教室を見渡したけれど、みんな授業に集中していてわからなかった。


 視線を落としてペンケースを眺める。何も頭に入ってこない。先生の黒板を使った式の解説は私の耳の中を通り抜けていってしまう。


 誰がこんなことするんだろう。


 ひどい、酷すぎる。お気に入りだったのに。


 この定規はお母さんが小さい時に使ってたやつで、シャーペンもペンケースも中学に入った時に買った、私のお気に入りだったのに……。


 私が一体なにをしたっていうの。転校してきて、自己紹介をして、それで、集まってきた人たちに名前を馬鹿にされて、怒っただけだ。たかしって名前なだけだ。

 それだけで、たったそれだけのこんなことをする人がいるのか。


 私の大事な宝物。それを呆気なく壊していった。


 なぜだか私は悲しくなるよりも呆れてしまった。筆記用具、買いに行かないとな。今日、なんのノートも取れないな。はぁ、困ったなあ。


 残りの授業、ノートが取れなかったからがんばって耳で覚えようとした。多分、ほとんど覚えられてない。やっぱりノートに取るのは大切なんだってわかった。


 今日はペンケースの中身は壊されたけれど、それ以上のことは何もされなかった。それだけはとても嬉しいことだった。こんな当たり前のことが嬉しいなんて可笑しいけれど、でも嬉しかったのだから仕方がない。


 学校から逃げるように足早に家に帰ってから、セーラー服のまま自転車で文房具店に向かった。


 タツタと書かれた大きい看板の文具店の前に自転車を停めて中に入る。私が普段使うような文房具や、いつ使うかも分からないけれど見た目が格好いい文房具なんかがいっぱい売っていて、とてもワクワクした。


 そんな中からまずはシャーペンコーナーを見る。スタイリッシュなかっこいいシャーペンや、クマさんが描かれた可愛いシャーペンなど、いろいろあった。


「どうしよっかなあ」


 呟きながら顎を触って考える。


「そうだ」


 私はクマさんで揃えることにした。クマさんのシャーペンに、クマさんのボールペン。クマさんの消しゴムにクマさんの定規。流石にサインペンはクマさんが無かったから、普通のサインペンを買った。


 ペンケースはどうしよっかなあ。


 ペンケースの内側は完全にインクで汚れてしまっていた。ペンケースも欲しいけれど、クマさんのペンケースは一二〇〇円もした。

 他の文房具も合わせると、結構な値段になってしまう。多分、二六八〇円。高い。


 お裁縫の材料とかも買いたいから、あんまりお金を使いたくない。


 うーん。どうしよっかなあ……。


「ありがとうございました」



 ふふふ、結局、ペンケース買っちゃった。


 私はウキウキで家に帰った。帰ってから使うのが楽しみだ。明日一、二時間目は体育だっけ。じゃあ使えるのは三時間目からだ。

 楽しみだなあ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ