表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと根波優子
272/274

私、ゆうこちゃんのこともっと知りたい

「私は高橋たかし。趣味はお裁縫。部活は天文部。根波さんが多分、今喧嘩をしてるのか日向さんたちと一緒にいないのは知ってる。もしあれだったら日向さんたちと仲直りするまででもいい。だから、それまでの間、お友達になってほしい。ね、いいでしょ、きらなちゃん」


 急に話を振られてきらなちゃんがすごいびっくりした声で返事をした。



「い、いいわよ。私は誰にでも優しくするからね。それがたとえたかしちゃんをいじめた相手だとしてもね。優子、あんたは今から私たちの友達よ」


 きらなちゃんは少し複雑そうな顔をしてた。多分、私のことを思ってだと思う。私はそれが嬉しかった。


「本当に、いいの?」


 私は根波さんにニコッとしてからきらなちゃんを見た。


「た、たかしちゃんが良いって言ってるんだから、それは良いってことなのよ」


 もう仕方ない。みたいな顔できらなちゃんは言った。


「でも、私、さっき吉良さんが言ったように高橋さんをいじめたんだよ? 本当にすっごく酷いことしたんだよ?」


 確かに、いじめられた。でもそれは日向さんを中心にだ。根波さんを中心にじゃない。それに、それに。


「いじめられてる時、私を守ってくれた時もあった。私覚えてるよ。根波さんが守ってくれたこと。本当に嫌だって思ったことをされたから覚えてる。それに謝ってくれたもん。プールでも謝ってくれた。そんなのもう友達じゃない? これからはたかしちゃんって呼んで? 私もゆうこちゃんって呼ぶから。仲良くしてくれると嬉しいな」


 ゆうこちゃんは困った様子で俯いてしまった。


「ゆうこちゃん! ちょっとこっちきて。私の席でお話ししよ? 私ここだとちょっとそわそわしちゃうから!」


 私は無理やりゆうこちゃんの手をとって私の席に向かった。


「たかしちゃんって最初の頃に比べたらかなり人見知り直ったよね」

「うん! きらなちゃんのおかげ!」


 本当にきらなちゃんのおかげ。こんなにきらなちゃんみたいなことができるのは、きらなちゃんがずっと私と一緒にいてくれるからだと思う。私、きらなちゃんに似てきたかな。そうだといいな。


 私の席にゆうこちゃんを引っ張ってきて、私は席に座った。きらなちゃんは前の席に、ゆうこちゃんは俯いたまま隣の席に座ってくれた。


「いい? 優子。あんたはもう友達だから。たかしちゃんのこといじめてたけど、それはもう過去のことなの。あんたはもう友達なの。正直言って私はまだ許しきれてないけど、たかしちゃんがああいうんだからトクベツに許してあげるんだからね」

「うん。ごめんなさい」


 きらなちゃん。ありがとう。


「本当にそう思うなら、これからたかしちゃんを仲良くすることに専念しなさい? わかった?」

「本当にいいの?」

「いいの!」


 私はゆうこちゃんの両手を握った。ぶんぶんと上下に振って仲良しをした。


「ねえ、お話ししよ。私、ゆうこちゃんのこともっと知りたい。ね、きらなちゃん。きらなちゃんはゆうこちゃんのこと知ってる?」

「うーん。小学校違ったし、一年の時も別のクラスだったし、知らないわね。ほとんど何にも知らないわ」

「きらなちゃんも知らないのかあ。これはたくさんゆうこちゃんのことが知れるね。あのね、私はおばあちゃんが作った芋の煮っ転がしが好きなんだけど、ゆうこちゃんは何の食べ物が好き?」

「ちなみに私の好きな食べ物は焼肉よ」

「あれえ? きらなちゃんハンバーグじゃなかった?」


 確か、友達ノートにはハンバーグって書いてあった覚えがある。うん、絶対ハンバーグだった。


「そうだっけ? まあどっちも同じくらい好きよ」

「ふふふ、きらなちゃんは適当だなあ」

「たかしちゃんは本当に煮っ転がし好きだねえ。でも本当に美味しいもんね。私もお肉じゃないのに好きになったもん! 珍しいよーこれは」


 本当に好き。多分ずーっと好き。いつか自分でも作れるようになりたいと思ってる。


「ゆうこちゃんは? 何が好き?」

「えっと。お寿司……」

「お寿司かー! 美味しいよね! そういえば引っ越してきてからお寿司食べてないなあ。東京ではよく食べに行ってたんだけどね」

「お寿司やさんこっから結構遠いからねえ」


 遠いんだ。今度お父さんが休みの日におねだりしてみよっかな。


「私、月一回食べに行ってる。十六日がお父さんとお母さんの記念日なの」

「ええー! いいなあ!」

「すご! 何記念日?」

「結婚記念日……」


 結婚記念日って、年に一回だよね……。


「毎月結婚してんの? どゆこと?」

「えっと、本当の結婚記念日は一月十六日なんだけど、毎月十六日になったら一ヶ月記念日してるの」

「すご! めっちゃラブラブじゃん。私お母さんたちの結婚記念日とか知らないわ」

「私も知らないなあ。確か八月だったかなあ」


 九月だっけ、何月だっけ。


「私は何月かもわかんないわ。そういやたかしちゃんは記念日とか覚えてんの? 付き合った記念日とか」

「えっ……と、何にも覚えてないや。何日だっけ……」

「もう、そういうのは女の子のたかしちゃんが覚えておかないと。どうせあいつは覚えてないんだから。ちゃんと覚えておかないと今後付き合った記念日とかでプレゼントせがめなくなっちゃうわよ」

「だって……。あの頃はいっぱいいっぱいだったから……。それに、プレゼントなんて誕生日だけで十分だもん。あ、でもクリスマスも欲しいな」

「ふふ」

「あ、ゆうこちゃん笑ってくれた!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ