表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと根波優子
265/274

きらなちゃんには負けたけど、私には勝った!

「たーかしちゃん! ねー! 帰ろっ!」

「うん、帰ろっか」


 ついに無事学校が終わった。あとは帰るだけだ。


「さっさと帰って遊ぼう!」


 ここまで何事もなく学校生活を送れたのはきらなちゃんのおかげ。私はそう思った。


 下駄箱の中はなんともない。いじめもない。本当に何にもなかった。多分明日も明後日もなんともないんだ。私はるんるん気分で靴を履いた。


「ねえ、きらなちゃんち寄るんでしょ?」

「うん、私着替えたいしね。制服も好きだけど私服の方が気持ちが上がるの」

「うんうん、わかる。私もセーラー服好きだけど、ワンピースとかお気に入りのお洋服着る方が気分が上がる!」

「でしょー? だから着替えさせてー」

「うん。その間、私は公園で待ってるね」

「うち入ってもいいんだよ?」

「入りたいなーとは思うけど、ちょっとだけだから我慢するの。そしたら次行った時がうんと楽しいから!」

「そかそか。じゃあ公園で待ってて」


 きらなちゃんのお家の前に着くと、きらなちゃんは「待っててね! 絶対だよ!」っていって家の中に入っていった。


 私はぎーこぎーこと前に後ろにブランコを漕いだ。


 きらなちゃんまだかなあ。今日はどんなお洋服着てくるんだろ。やっぱお腹の出てるお洋服かなあ。そろそろ寒くなってきたからきらなちゃんのお腹が心配だ。


 そういや昔、ブランコから靴飛ばしたっけ。今でもできるかな。


 一生懸命にブランコを漕いで、勢いをつけて靴を飛ばしてみた。


 もうそれは見事に私の後ろに飛んでいった。誰かに見られてたら絶対に笑われてたと思う。


 むうう。悔しい、もう一回。


 けんけんで靴を取りに行って、もう一度ブランコを漕いだ。この前きらなちゃんが漕いでたくらい思いっきり。とまではいかないまでも、できるだけ、必死に漕いで靴を飛ばした。


 飛ばした靴はぴょーんと真上に飛んで、目の前に落ちた。


「わっ……」


 もうちょっとで自分の頭に当たるところだった。危なかった。でももうちょっと、もうちょっとで前に飛ばせそうだ。次こそ、次こそ前に飛ばすんだ。

 私はもう躍起になって靴を飛ばした。三回目の挑戦で、ついにブランコを囲む柵を越えることができた。


 やった!


 やったやった!


「たかしちゃーん、お待たせー」

「あ、きらなちゃん。おかえりなさい」

「ふふ、おかえりって。あれ? たかしちゃん靴は?」

「あ、えっと……。飛ばしたの」


 私はぶらぶらと靴下だけの足を揺らしながら返事をした。


「ああー! 靴飛ばししてたの? あ、ほんとだ。たかしちゃんの靴みっけー。よーし、たかしちゃんはあそこね。じゃあ私と勝負だ!」

「えええ。勝負? 絶対負けるよう」


 絶対負ける。


 私の言った通り、負けた。きらなちゃんはすごい勢いをつけて靴を飛ばした。それはすごいスピードで公園の外まで飛んでいった。


「いえーい! 私の勝ち!」

「き、きらなちゃん凄すぎるよう。こんなの絶対勝てっこないよ」

「へっへっへ。たかしちゃんはまだまだだなあ。よいしょっと」


 きらなちゃんはけんけんで私の靴を取ってきてくれた。


「あ、ありがと」


 でも、私は私の中で目標を達成できたもん。きらなちゃんには負けたけど、私には勝った!


「じゃ、いこっか」

「うん。って、きらなちゃん靴は?」

「履くよー。一緒に行こ。公園の外まで行っちゃったし」


 手を繋いで、きらなちゃんはけんけんで公園の外まででた。


「よしっと。オッケー、やっと歩けるわ。さ、いこっかたかしちゃん」


 なんだか、きらなちゃんがすごくカッコよく見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ