お、本当だ、たかし来てるじゃん
「ねえたかしちゃん。学校どう?」
きらなちゃんが、お昼休みに私を心配して聞いてくれた。
「うん、全然大丈夫。まだちょっと怖いけど、きらなちゃんがいてくれるからとっても楽しいよ! 授業も楽しいし、休み時間も楽しい!」
「ええ? 授業も? それはおかしいんじゃない? 授業は楽しくないでしょ」
「ううん、楽しい! たまにきらなちゃん振り返ってくれるし」
「そ? じゃあもっと振り返ろっかなあ」
「ふふふ、そんなことしたら先生に叱られちゃうよ」
「そっか、目をつけられたら振り返れなくなるな。やめとこ」
「うんうん。たまにでいいんだよ。それが嬉しいから」
「ねー。今日はさー。どうする? たかしちゃんち行く?」
きらなちゃんは給食を食べながら私の顔をじっと見た。
「えっ、来てくれるの? 学校で遊べるからそれで終わりだって思ってた。きてきて! あそぼー!」
「よーし、じゃあまず私んちによって、着替えてからね。たかしちゃんは私の家までついてくること。分かった?」
「わかりました!」
「よしよし。って言うかたかしちゃん早く食べないと。遅くなっちゃうよ。あなた百回噛むんだから」
「そうだった」
もぐもぐもぐ。私は一生懸命ご飯を食べた。
「お、本当だ、たかし来てるじゃん」
「あ、ただしくん。こんにちは」
少し教室がざわついた気がする。私とただしくんに向けられる目線が痛い。
「こんにちはって」
ただしくんがお腹を抱えて笑った。
「んもう、そんなに笑わなくったって。ただしくんはもうご飯食べたの?」
「おう、もう食ったぞ。てかまだ食ってんのたかしくらいじゃね?」
「ええ、もうそんな時間? わわわ、早く食べないと」
よくみるときらなちゃんももう綺麗に完食している。
「じゃ、サッカーしてくるわ。じゃあな」
「もう行っちゃうの?」
「まあな、目線も気になるし、行くわ」
「うう、そ、そうだね。またね」
「おう」
ただしくんは教室から出ていった。本当のことを言うともうちょっと話してたかったなあ。
「あいつ、完全に私のこと無視していったわね」
そう言えばただしくん、きらなちゃんには何にも話しかけていかなかった。
「まあたかしちゃんの彼氏だからいいんだけどさ。なんか腹たつわ。たかしちゃんもこれ以上なく幸せそうな顔してるし」
「そ、そうかなあ、普通だったと思うんだけど」
「いや、デレデレだわ。くー、悔しいわ、私にはこんな顔してくれないもの」
「普通だってばあ」
「そんなことありません。ってかたかしちゃん、早く食べないと食器全部持ってかれちゃうよ」
「わー、早く食べないと」
ちらっと根波さんと目があった。私はスッと目線を逸らしてしまった。お返事しないとなのに、こんなんじゃダメだ。どうしよう。
給食を食べ終わって、食器を教室の前の箱に片付けた。
「よーし、何する?」
「何って? うーん……何しよっか」
周りを見渡すと根波さんは日向さんたちのグループで話していた。
「優子のこと気になる?」
「うん、気になる。ごめんなさいって言ってくれたし、ちゃんとお返事したい」
「なんて言うの?」
「えっと、こっちこそごめんなさいって」
「何それ! たかしちゃん悪くないのに!」
「だって、私もちょっとは悪かったって思ってるから。怒鳴っちゃったし、無視しちゃったし」
「それ以上のことしてきた奴らだよ? 謝んなくっていいって」
「でも、ごめんなさいって言われたら、こっちもごめんなさいかなあって。それと、もしよかったらお話もしてみたいかな」
「いじめた相手だよ? それにたかしちゃん友達にはなれないって言ってたじゃん」
「そうなんだけど、ごめんなさいって、面と向かって言われたら、なんかいいかなって思えちゃって。もし仲良くできるなら、それも楽しいかなって」
怖いけど、怖かったけど、先に進める。そんな気がする。
「たかしちゃんって強いね。私はいじめられた相手に、そんなことできないや。ムキーって思っちゃう。まあ、いじめられたことはないんだけどさ。それにたかしちゃんのこと考えたら許せないって思っちゃう」
「うん、きらなちゃんにはそう思っててほしい。きらなちゃんがそう思ってくれるのはすごく心強いから」
「そ? それならいいんだけどさ」
「それと、根波さんって、私をいじめてる時、そんなに乗り気じゃなかったような気がするの。一回止めてくれた事もあったし。なんか、わかんないけど、お友達になれるような。そんな気がするの」
「そっかー。でもたかしちゃんが言うなら私は信じる! でももしまたたかしちゃんに何かしようもんなら絶対に許さないからね!」
「えへへ、ありがとうきらなちゃん」




