私はぶつかった女の子に謝った
手を離してざぷんと潜ってどんどんきらなちゃんが進んでいく、私は追いかけるように必死で泳いだ。顔をつけて泳ぐのは苦手だった。きらなちゃんとの差がどんどん開いていく。私は追いつけるよう必死でバタ足をした。周りの人に迷惑にならないように水の中で。
だけど、きらなちゃんに追いつくことはできなかった。
「きらなちゃんどれだけ息が続くんだろう」
潜ったっきり全然上がってこない。私は何度も何度も顔を上げているのに。
気がつけば、きらなちゃんとはぐれてしまった。追いかけてももう追いつけないと思う。だからと言ってこのまま進むペースを落とせば、男の子三人の中に入ってしまう。それは恥ずかしい。ただしくんと付き合ってるとか何とか言われそうで余計恥ずかしい。
仕方ない。私はできるだけ前に進みながら流れるプールに流された。
いてっ。
必死に泳いでいたら誰かにぶつかってしまった。
「ごめんなさい……」
私はぶつかった女の子に謝った。
「大丈夫……。げ、たかしじゃん」
「あ、日向さん」
「私たちもいるんだけど?」
井岡さんに梁さん、根波さんもいた。みんな浮き輪をつけて、可愛い水着を着ていた。
「学校にもこないでこんなところで遊んでるんだ。へえー」
「う……」
何も言い返せなかった。
「そういえばさっき吉良っぽいの見かけたわ。一緒に来てるんでしょ?」
「うん……」
「あんたの彼氏も来てるのかしら? 竹達だっけ? 学校にもこないやつが彼氏持ちとかおかしいよね」
「うん、おかしいと思う」
これは本音だ。自分でもおかしいと思う。
「何それ、ばかにしてんの。はぁ、あんたの顔なんて見たくもなかったんだけど。みんな、上がりましょ。たかしのいないところで遊ぼ」
「そだねー」
日向さんたちがプールから次々上がっていく。根波さんが私の前にすうっと近づいてきた。
「あの、その、ごめんなさい」
そう言い残して、根波さんもプールから上がっていった。
浮き輪を持って日向さんたちが遠ざかっていく背中が見える。何にもされなかった。何だか私にもう興味がないような。そんな感じだった。
もう学校に行っても、いじめられないかもしれない。何となくだけど、なぜか確信が持てた。
私はしばらく、ぼーっと流れに身を任せて流されていた。




