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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとプール
255/274

きらなちゃんはひっくり返ってプールにはまった

「昔からお金全然使わないもんね。でもお小遣い毎月三万円もらってるらしいわ」

「まじ? 俺三千円なんだけど、十分の一じゃん。ここの入場料も払えないんだけど。今回母さんには頼んでもらってきたけど」

「でもあんたお金なんて使わないでしょ? ずっとサッカーじゃん」

「まあな」

「たかしちゃんはいくらもらってるの?」

「私も三千円かなあ。高校生になったら五千円にしてくれるらしい。あとはお年玉貯金かなあ」

「まあそうだよねえ。私も同じだわ。私たちは服とか買うから大変よねえ」

「うん、服はたまにお母さんにおねだりして買ってもらう。高いからねえ。裁縫もするし、結構お金は使うかなあ」

「意外とたかしちゃんが一番お金使ってそうね」

「うん、そうかも。お裁縫って結構お金かかるんだよねえ」

「そうなんだな。縫うだけかと思ってたわ」

「ばかねえ、材料費ってものが必要なのよ」

「まあそりゃそうか」


 れいかちゃんって本当にお嬢様なんだなあ。いいなあ。私もお嬢様が良かった。いろんなお洋服いっぱい買いたかったなあ。


「ばあっ!」


 正面の水面かられいかちゃんが飛び出してきた。


「わあ、れいかちゃん」

「あははー、やっと追いついた。追いついたっていうか、追い抜かした? 私たちの方が早かったもんね。周回遅れだね」

「ばあっ」


 きらなちゃんの前にここちゃんが顔を出した。


「ここ、それさっき麗夏で見たわよ」

「ちぇー、れいれいがやってたから僕もやってやろって思ったのに」

「全然ダメね、新鮮味に欠けるわ」

「くそー、こうなったら」


 ここちゃんが潜って消えた。


「わ、ここ! ちょっと! やめなさい! ばか! こら! わああ!」


 きらなちゃんはひっくり返ってプールにはまった。


「こらここ! 何で水着脱がそうとするの! そんなことしたらダメでしょ! 見えたらどうするの危ないわねえ」


 浮かび上がってきたきらなちゃんがここちゃんに怒った。

 脱がす?

 脱がすって水着を?


「たかしちゃんも気をつけた方がいいかも」

「ええ。気をつけるって、どうやって。わああ、ここちゃんまって、ストップストップ」


 ここちゃんが水の中から私のスカートごと水着を脱がせようとしてきた。


「ダメダメダメー!」


 私は抵抗するために必死に暴れた。そしたらバランスを崩して、きらなちゃんと同じように水の中に落っこちた。


「あははー、僕の勝ちー」

「せいっ! 勝ちって何よ。脱げたらどうすんの」

「水の中だし見えないよ」

「そういう問題じゃないわよ! 大丈夫?たかしちゃん?」

「うう、お水飲んだ。でも大丈夫。何とか逃げ切れた」


 足を浮かすとすうっと体が流されていく。足をついていても水に押されるように流されていく。さっきまでの浮き輪お姫様抱っこが終わってしまった。


「くっそー、ダメだったか!」

「ダメだったかじゃないわよ! 何すんのよ!」

「だって、シュートたち紐で縛ってあって脱がせられないんだもん」

「いや、蹴人たちのもダメよ。ここは公共の場よ? わかる? 公共の場!」

「コーキョーのば。うん、わかるよ」

「絶対わかってないでしょ。って、あんたたち何浮き輪に乗ってるのよ! 私たちの浮き輪でしょ?」

「交代だよ。ちゃんとぶつからないように操作してくれよー」

「あんたたちもお嬢様になりたいってわけね。お嬢様ってかお坊ちゃんか」

「私もう一周してくるね、ぶつからないように泳ぐの楽しいんだ」

「僕も! 僕もいく!」

「いこっかこっこちゃん」


 ざぷんと潜ってれいかちゃんとここちゃんは泳いで行った。またしばらくしたら多分後ろから追い付かれることになる。


「一は? 行かなくていいの?」

「いや、二人についてくのはちょっと。無理があるかな。一回で相当な距離あるよこれ」

「確かに。このコース結構長いもんね。じゃあさ、蹴人の浮き輪操作してよ。私もちょっとは泳ぎたいし」

「いいけど」

「ほら、たかしちゃん、泳ご」

「いや、じゃあ俺はどうなるんだよ」

「忠は普通に浮き輪に入って流されてて。操作する人いなくなっちゃうから」

「ったく。俺のおぼっちゃまタイムなしかよ」


 忠くんは浮き輪から転げ落ちて、普通に浮き輪を身につけて浮かんだ。


「んじゃ、私たちも泳いで行くから、ゆっくり流れててね。追いつけるように」

「はいよ」

「行こ、たかしちゃん」


 きらなちゃんは私の手を引っ張った。

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