ただしくんにそう言ってもらえて、心がキュンとなる
「まあ、後ろにすっげえ人並んでるけどな」
「ねえねえ、私の水着どう?」
「どうって……。そりゃ、か、かわいいよ」
「やった。じゃあ髪型は? いつもと違うでしょ? 今日はポニーテールにしてみたの。やっぱりリボンないと変?」
「変じゃねえよ。似合ってると思う。リボン無しとか新鮮すぎてあれだけど……」
「あれって何? あれって何?」
「おまえ、ほんと二人きりになったら結構グイグイくるよな」
「きらなちゃんを見習ってみてます」
「見習わなくていいやつを……」
「で、あれってなあに?」
「あれはあれだよ。ちょっとドキドキするというか。新鮮すぎてな! 新鮮すぎてな!」
ただしくんは二回も言った。そんなに言わなくたっていいのに。でも嬉しい。私は繋いでいたただしくんの腕を抱きしめた。
「わ、ばか。胸当たってるって」
「わ、そっか。そっか……」
でも、私は腕を離さなかった。何だか離したくなかった。私たちがナンパされるってことは、ただしくんたちもナンパされるかもしれないってことだ。そんなの嫌だ。ただしくんは私のだ。
私はただしくんのお顔を見た。
「あ、あんまこっちみんなよ」
恥ずかしそうにそっぽを向いた。顔が真っ赤なのがわかった。私も顔は真っ赤だ。もうみなくてもわかる。きらなちゃんとかがきたらどうしよう。こんなにひっついて、なんて言い訳しよう。でも、離れたくない。ぎゅーっと腕にしがみついた。
「まだ焼けないねえ」
「ま、まだ五分も経ってねえからな。っていうか、離れねえ?」
「やだ。ただしくんがナンパされないか見張ってるの」
「ナンパなんてされねえよ。ってか流石に手を繋ぐとかにしねえ? めっちゃ胸当たってるんだけど」
「ただしくんえっち。でもやだ、こうしてたいの」
「お前、人見知りどこいったんだよ。恥ずかしい恥ずかしいって言うのがたかしだろ?」
「恥ずかしいけど、ただしくんは知ってる人だもん。恋人だもん。人見知りなんてしないよ。いいの。こうしてるの」
「いいのって……、はあ、別にいいけどさ。嫌じゃないし」
「うん、何だかこうしてると本当に恋人みたいだね」
「まあ、恋人なんだけどな」
ただしくんにそう言ってもらえて、心がキュンとなる。きらなちゃんも阿瀬君と付き合っちゃえばいいのにな。れいかちゃんはどうだろう。縫合くんやここちゃんは……。私、何でただしくんを好きになったんだっけ。なんかもう忘れちゃったな。でも今があるからいいや。
「あ、ソフトクリームあるよ!」
「おお、ほんとだな」
「ただしくん食べる?」
「いや、俺はいいや。飯前だし」
「ねえ、食べてもいい?」
「別にいいけど、飯前だぞ?」
「いいの。たこ焼き六個に減らすから」
「いや、ソフトクリーム食べてもいいけどご飯はちゃんと食べろ。運動するんだから」
「はあい……。ソフトクリーム、食べたいなあ」
「食べればいいじゃん。頼んでやろうか?」
「ねえ、思考読み取って?」
「今?」
「うん、今」
ただしくんは私の掴んでいない手で、頭を撫でた。
「うーん」
「どう? わかった?」
「よし。すいません。ソフトクリームひとつお願いします」
ただしくんは自分の財布を出して、お金を払った。
「はい、ソフトクリーム。落とすなよ」
「すごーい、何でわかったの?」
「思考読み取れるからな。ってか何、奢って欲しいって。ソフトクリームくらい自分で買えよ」
「ちょっと恋人っぽいことしてみたかったのー。そんなこと言う人にはソフトクリームあげないんだから」
そっぽを向いてソフトクリームをぺろっと舐めた。冷たくて甘い。ミルクの香りがしてとても美味しい。
ちらっとただしくんを見た。ただしくんは私を見たままぼーっとしていた。
「欲しい? 欲しい?」




