な、内緒だもん
「んー、何でもいいかなあ、食べれたら。たかしたこ焼き食べたいんだろ? あっち並ぶか?」
「うん」
「忠は優男だねえ。じゃあ僕たちもあっちならぼっか。僕もたこ焼きにする」
「優男はどっちだよ。自分だって御城に合わせてるじゃねえか」
「僕はみんなに優しんだよ。もちろん忠にだって優しいよ?」
「嘘つけ。じゃ綺羅名、また後で」
私たちは焼きそばの列から離れてたこ焼きの列に並んだ。
「たこ焼きのソース自分でかけれるんだって! 鰹節とか青のりも。なんかワクワクするね」
「ソースいろんな種類ありそうだなあ。何が美味しいかなあ」
「あんま変な奴とかやめとけよ、まずかったらショックだぞ」
「はあい」
「まあそんなまずいソースは置いてないと思うけどね」
「わかんねえだろ? あー、でもミックスとかしたら面白いかも」
「それこそ不味くなりそうだよ?」
「だよなー。ってか結構並んでんな。これ今焼いてんの?」
「焼いてるっぽいねえ。作り置きとかはなさそう」
「結構時間かかりそうだなあ。って言ってももう一回あの列に並び直すのも嫌だしな」
向こうの列はさっきよりも長く伸びていた。
「まあ、待つか」
「うん、待つしかないね」
「じーっ」
れいかちゃんが私の事をじっと見ている。どうしたんだろう、まただこ焼き食べてないから顔に何かつくわけもないのにな。
「たかちゃんってさ、ただしーのことほんとに好きなんだね」
「え、えええ、な、なんで」
「だって、ただしーの顔ちらちら見てるし、なんか隣にいるだけで幸せそうだし。手がピクピクしてるし。ほんとは手繋ぎたいんでしょ」
「うっ、な、内緒だもん」
「だからたかし、それ、内緒になってないんだってば」
「なんで? 繋げばいいじゃん。私たちがいるから? 別に気にしなくってもいいよ? ね、はじめん」
「うん、僕は別に冷やかしたりはしないよ。て言うかむしろジリジリされる方が冷やかすかも」
「だ、だって……恥ずかしいし」
「もう恋人同士なのはバレてるんだしさ。いいじゃん。繋いじゃいなよ」
「うう、そう言われても……。恥ずかしいのは恥ずかしいもん」
「じゃあここはただしーの出番だね。男見せる時だ」
「え、俺の番? 何。どう言うこと?」
「ほら、彼女が待ってるよ? いいの? ほったらかしにしちゃって」
「いや、何で、いや、ほら。……ああ、もう。わかったよ。繋げばいいんだろ? 繋げば!」
ただしくんは私の手をとって握ってくれた。でも、今目の前にはれいかちゃんも縫合くんもいる。すっごい恥ずかしかった。
「うんうん、恋人みたいになったね。これでたかちゃんが誰かに声かけられることもないね。ただしーちゃんと守ってあげなよー?」
「お、おう」
「れ、れいかちゃんは。れいかちゃんは好きな人とかいないの?」
「うーん、前も言ったけどあんま考えたことないかなあ。水泳の方が好きだし」
「じゃ、じゃあ縫合くんは?」
「僕も別にって感じかなあ。かわいいとかは思ったりするけど、好きかって聞かれるとうーんって感じするなあ」
「そう、なんだ」
ダメだ。この二人には仕返しができない。からかうところがない。でも、二人はからかって言ってるわけじゃないんだよね。私たちのために、言ってくれてるんだよね。
「とか言ってるうちに私たちの番だ」
れいかちゃんが先に注文をして、その後縫合くんが注文をした。その後に並んでいた私たちが注文をすると「ちょっとお待ちください」と言われた。
「ちょうどたこ焼きがなくなっちゃって、一五分から二十分待ってもらってもいいですか?」
「ここまできたら、待つしかないよな」
「そだね。れいかちゃんたちは先戻ってて。たこ焼き買ったら戻るから」
「はいはい。残念すぎたねえ、後もうちょっとだったのに」
「じゃ、僕たちは先行ってるから」
「おー、みんなによろしくー」
「はーい、任せてー」
フードコートから二人は出て行った。多分、きらなちゃんたちもお母さんのところにいってるはず。
「……二人きりになっちゃったね」




