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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとプール
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そもそも今の話を聞いてなかった!

「いいの? お母さん呼んでるよ?」

「いいの、あんな浮気者ほっといてご飯食べよ」

「たかしちゃんが怖い……」

「だってあんなの浮気じゃん。絶対ダメだよ」

「忠、あんたも絶対気をつけなさいね」

「な、しねえよそんなこと」

「きらなちゃんも絶対しちゃダメだよ! 阿瀬君も!」

「は、はい!」


 二人は緊張した様子で返事をした。


「って、俺もきらなも付き合ってるやついないんだけど」

「阿瀬君はきらなちゃんを大事にしなさい! ばか!」

「ば、ばかって……」

「たかしちゃんが怒ってるー。怖いよー」

「たかちゃんって怒ると意外と怖いんだね」

「怖くないよ! 普通! 普通! ね、普通でしょ?」

「は、はい。普通です」

「はあもう、お母さんったら。やだやだ。お母さんがナンパされてるところなんて見たくもない」

「もう、たかしちゃん。いいじゃん、たかしちゃんのお母さん若いんだしさ」

「よくないよ! それに若くないよ! 三十二歳だよ!」

「私のお母さんは三十六だよ」

「私のお母さんは三十五歳よ」

「じゃあれいかちゃんときらなちゃんのお母さんの方が先輩だ」


 他のみんなはどうなんだろう。


「いや、そんな目で見られても。知らねえよ? 母親の年齢なんて」


 えええ、阿瀬君自分のお母さんの年齢知らないの?


「じゃあただしくんは?」

「確か三十いくつだったはず」

「え、え、縫合くんは知ってるよね?」

「うちは三十一だよ」

「よかったあ。縫合くんは知ってると思った……」


 ここちゃんは?

 ここちゃんは知ってるよね?


「ここちゃんは?」

「何が?」


 そもそも今の話を聞いてなかった!


「ごめんごめん、ご飯何食べよっかなあって考えてた」

「もう、ここちゃんったら。でもそうだねえ、ご飯何があるかなあ」

「フードコートと売店があったはず」

「そっか、ただしくんきたことあるんだもんね。その時は何食べたの?」

「んー、何だったか、忘れたわ」

「とりあえずもうすぐ着くわ」


 と言っている間に、フードコートについた。中は人でごった返していた。昼ごはんどきだから仕方ないと思うけど、どこの席にも座れそうになかった。


「座れそうにないねえ。なんか手に持って食べれる物買ってたかしちゃんのお母さんとこで食べよっか」

「そうだね、たこ焼きとか焼きそばとか、フランクフルトとかもあるみたいだし」

「じゃあ俺決めたから買ってくるわ」


 阿瀬君が注文の列に並び始めた。私たちも取り残されないように列に加わった。


「あれ? みんなここ?」

「とりあえずよとりあえず。て言うかペアなのに私置き去りにしたわね」

「あ、悪い悪い。まあ今ここには全員いるんだしまあいいじゃん」

「あんたねえ……。で、蹴人は何にするの?」

「焼きそばの大盛りとフランクフルト」

「なるほどねえ。たこ焼きはあっちの列なのね。じゃあ私もおんなじのにするわ。焼きそばとフランクフルト」

「僕カレーとフランクフルトにしよー」


 ここちゃんが言った。


「カレーってお皿じゃないの?」

「ほら、見て、あの人たちのカレーのお皿、紙っぽいよ?」

「ほんとだ、じゃあカレーも食べられるのかあ」

「私たこ焼きにしよっかなあ。たこ焼き十二個とかもあるみたいだし」

「私もたこ焼き食べたいなあ」


 ただしくんはどっち食べたいだろう。焼きそばかな、カレーかな。たこ焼きかな。ただしくんの顔を見ると目があった。何だか言いたげだったけど、何も言わなかった。


「ただしくん何食べたい?」

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