しまった。思考を読み取られてしまった
阿瀬君を先頭に、私たちは戻ってきた。
正直、ただしくんにぎゅーってしたかった。だけど流石に恥ずかしいからやらなかった。
「なんかあった?」
すっとただしくんの前に陣取った私の頭の上に手を乗せて、ただしくんが言った。しまった。思考を読み取られてしまった。
「なんか三人組の男にナンパされてた」
「あー、それは良くないね。もうあんまり女子だけでうろつかない方がいいかも」
「確かになー、あいつらまたあったら声かけてくるかもだし」
「じゃあペアでも作る? なんかあった時、一緒に行動するペア。トイレとか、売店とか、自販機とか。そう言う時に一緒に行動するんだけど、どう? これだとナンパされにくいでしょ?」
「確かに」
「じゃあペア決定。ごめんね、御城さんのペア僕だけど」
「全然いいよー」
「おい待て、何勝手に決めてんだよ」
「何言ってんの。恋人同士の忠と高橋さんは確実にペアとして、好き同士の蹴人と吉良さんもペア確定でしょ」
「好き同士じゃねえよ!」
「じゃあ御城さんとペアになる? せっかく吉良さんとペアになるチャンスなのに?」
「うっ。わ、わかったよ。それでいいよ」
「素直でよろしい。って言ってもペアになったから何するってわけでもないけどねー。って何この辛気臭い雰囲気。みんな照れすぎだよ! ほら、前向いて!」
「て言うかここは?」
「ここはほぼ男だし、スクール水着だから大丈夫でしょ。スクール水着ナンパする奴なんかいないって」
縫合くんが辛辣だ。確かにスクール水着だけど。でも女の子だよ!
「確かに、ここなら大丈夫か。ナンパされても逃げられるだろうし。……ここ? ナンパされたら逃げるのよ? わかった?」
「はーい、わかった」
いいんだ、ここちゃんそれでいいんだ。なんか心配だなあ。
「じゃあペアも組んだわけだし、滑りにいこっか」
「いこーいこー!」
ここちゃん、それでいいんだ。
スライダーに到着すると、みんな浮き輪に乗って二人一組で滑っていた。
「ちょうどいいね、ペア作ったばっかだし」
「確かにね。でもここは?」
「僕一人? 独り占め? ラッキー」
「ああ、そう。ならいいわ。じゃあ誰から滑る?」
「僕いっちばーん!」
「じゃあここ一番ね。じゃあ私たちが二番にしようかな」
きらなちゃんが手を上げた。
「じゃあ私たち三ばーん」
「ってことはたかしちゃんチームがラストね」
ふふ、チームだって。二人しかいないのに。
「じゃあ僕行ってくるねー!」
ここちゃんが浮き輪の上に座って滑り降りていった。結構速そうだ。
「たかしちゃん、大丈夫? 怖くない?」
「た、ただしくんがいるから大丈夫」
「何? 惚気? もう、やんなっちゃうわ! ふふふ」
そ、そんなつもりで言ったんじゃなかった。チームだから、チームだから。
「じゃあ私たちも滑りまーす」
二つ穴の空いた浮き輪の、前に阿瀬君、後ろにきらなちゃんが乗って、滑っていった。
「面白いねえ。こんな浮き輪があるんだねえ。それも穴に座るって。いろんな使い道あるなあ」
「ね、浮き輪って言っていいのか迷っちゃうね」
「でも輪っかだからねえ。メガネみたいだけど」
「確かに」
「じゃあ忠、高橋さんの面倒ちゃんと見るんだよ?」
「お前こそ御城の面倒ちゃんとみろよ」
「任せてよ。どっちが前乗る?」
「私前がいい!」
「じゃあ僕後ろね。じゃ、いってきまーす」
「いってきまーす」
れいかちゃんと縫合くんが滑り降りてしまった。私たちは二人取り残されてしまった。




