その場でぶくぶくと沈み込んだ
きらなちゃんの顔を見る。これは本気の顔だ。冗談じゃない。このファッションショーを途中で中断なんて絶対にさせられないと思った。
か、覚悟を決めるしかない。
「一人目は、スクール水着のここでしたー。もう一度拍手をお願いしまーす。ていうかここ、こう言うこと興味あったのね」
「ううん、興味はないけど楽しそうだったから! もう一回やる?」
「もう一回はいいわ、次は私よ」
きらなちゃんは一歩前に出て。腰に手を当てた。それからくるっと回って男子に「どう?」と聞いた。
「ど、どうって言われてもなあ」
「まあ、水着だなあって感じ」
「僕は可愛いなって思うけど、蹴人はどうなの?」
「はあ? 何言ってんのお前。どうなのってなんだよ」
「可愛いなって思ってるんでしょ。僕にはわかるよ」
「あー、それなら俺にもわかる」
「忠わかるよね、だって高橋さんの水着も可愛いもんね」
「はあ、何言ってんの」
「じゃあ可愛くないの?」
「いや、そんなことは言ってないけど……」
「僕は可愛いと思うけどな。二人とも」
「か、可愛いけど……」
ただしくんと阿瀬君が、縫合くんに負けて可愛いって言った。
「もちろんだけど、御城さんも可愛いと僕は思うよ。御城さんっぽくて素敵だと思う」
「お前、よくそんな恥ずかしいこと言えるな」
「だって、みんなで選んできたんでしょ? じゃあちゃんと言ってあげないと。男としてそれくらいはしないとさ」
「男としてって、お前大人なー」
「二人が子供なんじゃない。かわいかったら素直にかわいいって言えばいいじゃん。好きなんでしょ?」
「おい! 忠はそうだとしても、俺は違うからな」
「ふーん、それでいいんだ。吉良さんとか高橋さんとか御城さんの可愛さだったらナンパとかされちゃうかもよ?」
「知らねえよそんなの」
なんかファッションショーをやる雰囲気じゃなくなってしまった。ラッキーって思ったらきらなちゃんに怒られちゃうかな。でもみんなの前でポーズしてくるりなんて恥ずかしくてできなかったからよかった。
「とりあえずプール入ろうぜ!」
阿瀬君が走ってプールに飛び込んだ。
「ああ! ファッションショーの続きは! っていうか、本音言えば忠にたかしちゃんの水着見せつけたかっただけなんだけど!」
阿瀬君を追いかけてきらなちゃんがプールに飛び込んだ。続いてここちゃんやれいかちゃん、縫合くんが飛び込んでいった。ただしくんは飛び込まないのかな。すうっとただしくんの顔を見ると目があった。何か言いたげだった。
私は少し恥ずかしくなって、胸を隠した。
「んー、あれだ。隠さない方がか、かわいいと思うぞ」
私の頭を撫でて、ただしくんはプールに飛び込んだ。
絶対今、顔赤くなってる。ほっぺた熱い。
私はゆっくりとプールに足から浸かって、その場でぶくぶくと沈み込んだ。体がひんやりしてきもちいいけど、特に顔がひんやりして気持ちいい。もうほっぺは赤くなくなった気がする。
二十五メートル泳ぎ切ることはできないけど、少しの距離なら泳ぐことならできる。それにここのプールは胸くらいまでの高さまでしかない。泳がなくたって遊ぶことができる。
私たちは水をかけあったり、誰が長いこと潜れるか競ったり、ビーチボールで遊んだりした。ビーチボールは一度も狙った方向に飛ばせなかったし、笑われてムッとしたけど楽しかった。
「ねえ、ウォータースライダー行かない?」
「いいねえ、楽しそう!」




