よし、みんな揃ってるわね
「わあ、すごい、広ーい。それに屋根があるんだ」
いくつものプールが並んでいて、滑り台のパイプが上には張り巡らされていた。プールは大きな屋根で覆われていて、夏の日差しをものともしなかった。
「たかしちゃん遅いよー。何してたの」
きらなちゃんが一人で待っていてくれた。
「ちょっと着替えるのに手間取っちゃって……」
「あんなタオルなんて使うからよ。ちゃちゃっと着替えれば誰も見ないわ」
「だってえ。お外で裸ん坊になるの恥ずかしいんだもん」
「でもまあ、水着のまま出て来たから許してあげるわ。パーカーとか着てくるんじゃないかとか、タオル巻いて出てくるんじゃないかとか思ってたからね」
「きらなちゃんがパーカー禁止って言うから。そっか、タオル巻いてくればよかった」
「タオルもダメよ」
「ちぇー。それよりみんなは?」
「もうプール行ったわ、たかしちゃんのお母さんはこっち」
きらなちゃんに連れられて、プールの隅っこに行くと、お母さんがレジャーシートを敷いて座っていた。
「あ、たかしちゃん。可愛い水着ねえ。みんなと遊んでらっしゃい、何かあったらここに戻ってくるのよ? お母さんはずっとここにいるからね」
「はあい」
なんでお母さん水着なんだろう。ここにずっといるなら普通の服でもいいと思うけどな。それも、きらなちゃんみたいな大人な水着着てる。お母さんなのに。でも似合ってる。私も大人になったら似合うようになるのかな。
「みんなあそこのおっきなプールにいるらしいから、行ってみましょ」
「う、うん」
「どうしたの?」
「なんかやっぱり恥ずかしくなってきた」
「そんなのもう今更よ! 私なんてこんなよ? ほら走って行くわよ! 滑らないように気をつけて!」
きらなちゃんに手を引かれて走った。きらなちゃんの大きな胸が揺れているのがわかった。残念ながら私の胸は全然揺れていなかった。大きなプールの目の前にきた。みんなどこだろう。お客さんがいっぱいで全然見つけられない。
「あ、あそこにいたわ!」
「どこどこ?」
「おーい! ちょっとー! 蹴人ー! 麗夏ー!」
きらなちゃんが大声で呼ぶと、みんなぞろぞろと泳いで近くまできた。
「なんだよ、遊んでんだけど」
「わかってるけどさ、ちょっと上がってくれる? すぐ、すぐだから」
「なんだよ、何するんだよ」
文句を言いながら阿瀬君たちが上がってきた。
「よし、みんな揃ってるわね。あのね、せっかくだからファッションショーさせなさいよ。私たち、せっかく可愛い水着選んできたんだから」
ファッションショーってきらなちゃん……。
「僕もやるー!」
「いや、あんたは……まあいいわ。ここも参加ね。男子たちはみんな学校の水着だからファッションショーは無しよ」
「いや、たとえそうじゃなくてもやらねえよ」
「まあいいわ、じゃあ一番誰が行く?」
「じゃあ僕!」
ここちゃんはみんなの前に一歩出て、膝に手をついてポーズをとった。そしてくるっと一回りしてから女子の中に戻ってきた。
れいかちゃんが拍手をして、それに釣られてみんなも拍手をした。
何これ、恥ずかしすぎる。こんなことするの?
私、水着着てるんだよ?
きらなちゃん?




