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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとプール
244/275

よし、みんな揃ってるわね

「わあ、すごい、広ーい。それに屋根があるんだ」


 いくつものプールが並んでいて、滑り台のパイプが上には張り巡らされていた。プールは大きな屋根で覆われていて、夏の日差しをものともしなかった。


「たかしちゃん遅いよー。何してたの」


 きらなちゃんが一人で待っていてくれた。


「ちょっと着替えるのに手間取っちゃって……」

「あんなタオルなんて使うからよ。ちゃちゃっと着替えれば誰も見ないわ」

「だってえ。お外で裸ん坊になるの恥ずかしいんだもん」

「でもまあ、水着のまま出て来たから許してあげるわ。パーカーとか着てくるんじゃないかとか、タオル巻いて出てくるんじゃないかとか思ってたからね」

「きらなちゃんがパーカー禁止って言うから。そっか、タオル巻いてくればよかった」

「タオルもダメよ」

「ちぇー。それよりみんなは?」

「もうプール行ったわ、たかしちゃんのお母さんはこっち」


 きらなちゃんに連れられて、プールの隅っこに行くと、お母さんがレジャーシートを敷いて座っていた。


「あ、たかしちゃん。可愛い水着ねえ。みんなと遊んでらっしゃい、何かあったらここに戻ってくるのよ? お母さんはずっとここにいるからね」

「はあい」


 なんでお母さん水着なんだろう。ここにずっといるなら普通の服でもいいと思うけどな。それも、きらなちゃんみたいな大人な水着着てる。お母さんなのに。でも似合ってる。私も大人になったら似合うようになるのかな。


「みんなあそこのおっきなプールにいるらしいから、行ってみましょ」

「う、うん」

「どうしたの?」

「なんかやっぱり恥ずかしくなってきた」

「そんなのもう今更よ! 私なんてこんなよ? ほら走って行くわよ! 滑らないように気をつけて!」


 きらなちゃんに手を引かれて走った。きらなちゃんの大きな胸が揺れているのがわかった。残念ながら私の胸は全然揺れていなかった。大きなプールの目の前にきた。みんなどこだろう。お客さんがいっぱいで全然見つけられない。


「あ、あそこにいたわ!」

「どこどこ?」

「おーい! ちょっとー! 蹴人ー! 麗夏ー!」


 きらなちゃんが大声で呼ぶと、みんなぞろぞろと泳いで近くまできた。


「なんだよ、遊んでんだけど」

「わかってるけどさ、ちょっと上がってくれる? すぐ、すぐだから」

「なんだよ、何するんだよ」


 文句を言いながら阿瀬君たちが上がってきた。


「よし、みんな揃ってるわね。あのね、せっかくだからファッションショーさせなさいよ。私たち、せっかく可愛い水着選んできたんだから」


 ファッションショーってきらなちゃん……。


「僕もやるー!」

「いや、あんたは……まあいいわ。ここも参加ね。男子たちはみんな学校の水着だからファッションショーは無しよ」

「いや、たとえそうじゃなくてもやらねえよ」

「まあいいわ、じゃあ一番誰が行く?」

「じゃあ僕!」


 ここちゃんはみんなの前に一歩出て、膝に手をついてポーズをとった。そしてくるっと一回りしてから女子の中に戻ってきた。

 れいかちゃんが拍手をして、それに釣られてみんなも拍手をした。


 何これ、恥ずかしすぎる。こんなことするの? 


 私、水着着てるんだよ?


 きらなちゃん?

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