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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとプール
243/274

ここちゃんが上半身スクール水着で走ってきた

「たかしちゃん、着替えないの?」


 きらなちゃんが不思議そうに私を見ている。着替えたい。でもみんな見てるから……。


 カバンからラップタオルを取り出して、体に巻きつけた。


「何やってんの、そんなのしてたら着替えるのに時間かかるよ?」

「だって、みんな見てて恥ずかしいんだもん」


 私はきらなちゃんたちに見られながら、スウェットのワンピースを脱いだ。これで上は下着姿だ。


「先行ってていいよ。私着替えたら行くから」

「いいよいいよ。着替えるまで待ってるよ」


 そうじゃなくって、見られるのが恥ずかしいんだってばって言えない。みんな親切で待ってくれているんだ。


「だ、大丈夫だから。先行ってて。すぐ着替えていくから」


 ショートパンツを脱いだ。夏の空の下自転車を漕いだから汗でしっとりしている気がする。


「そう? じゃあ先行ってるけど、たかしちゃん一人で大丈夫?」

「大丈夫。あ、でも、見つけやすいところにいてね」

「うん。わかった。じゃあ」

「きらきらー、僕こっちだったー」


 後ろから荷物を持ったここちゃんが上半身スクール水着で走ってきた。


「え? 何? トイレ行ってたんじゃないの?」

「ううん、シュートたちと更衣室行ってた」

「更衣室って、それ男子の更衣室じゃない」

「僕全然気づかなくって、服脱いだら従業員の人に怒られた。女子の方に行きなさいって言われて気づいた。部活の時いつも一緒に着替えてるからその流れで……」

「この際いつも一緒に着替えてるはもう聞かなかったことにしてあげるけど。あんたはもうちょっと女の子って自覚を持ちなさい。わかった? あんたは女の子なの」

「はーい」

「下に水着着てるからよかったものの、着てなかったら最悪の場合いろんな男の人に見られてた可能性もあるんだからね?」

「それは別にいいけど」

「よくないわよ!」


 パスーンときらなちゃんがここちゃんの頭を引っ叩いた。


「まあいいじゃん、プール行こー。私これ脱いだら……、ほら、準備完了!」

「ちゃんと荷物をロッカーに入れなさい。鍵閉めるのよ?」

「はーい」


 ここちゃんは荷物を全部ロッカーに詰め込んだ。


「お財布は持ってなさい。何か買うかもしれないんだから」

「はーい」

「そうそう、お財布ね、みんな自分のお財布この鞄の中に入れなさい。私が肌身離さず持ってるから、それなら安心でしょ。使うときは教えて。渡したげるから」

「ありがとうございます」


 きらなちゃんとれいかちゃんとここちゃんはお財布をお母さんの持っている鞄の中に入れた。私もラップタオルを着たまま鞄の中にお財布を入れた。


「じゃあ先行ってるねー」

「うん!」


 みんなが見えなくなってから、私は急いで水着に着替えた。

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