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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとプール
242/275

阿瀬君がプールの入り口で腰に手を当ててポーズを決めていた

「いっちばーん!」


 阿瀬君がプールの入り口で腰に手を当ててポーズを決めていた。


「はあ、はあ、ふふふ、阿瀬君変なの」

「な、ビリが何を言う」

「だって、みんな早いんだもん。追っつけないよう。はあ」

「たかしは運動音痴だなあ」


 阿瀬君にばかにされた。


「むっ」

「あはは、怒った怒った。じゃ、入ろうぜー」

「たかしちゃんのお母さんまだだよ?」

「大丈夫でしょ、多分お金払ってる間に追いつくって」

「確かに。じゃあお金払っちゃいましょうか」


 大人一人四千百二十円。高い。お洋服買えそう。


「入場料ってこんなに高いのね。初めて来たからびっくりしたわ。まあお母さんから先に聞いてはいたんだけどね」

「プールで遊ぶだけなのにな」

「みんなここ初めて?」

「うん。聞いたことはあったけど、私は初めてかなあ」

「僕も初めてー。市民プールなら行った事あるよ」

「市民プールはいいのよ。じゃあみんな初めてか。楽しみね」

「俺らの意見は無視かよ」

「どうせ行った事ないんでしょ。だって学校の水着しか持ってないもんね」

「いやまあそうだけど」

「俺は来た事あるぞ。小学校の時だけど」

「え? まじ?」


 ただしくん来た事あったんだ。


「家族でなー、めっちゃデカかったこと覚えてるわ。後広い」

「そうなのね。楽しみねえ」

「ほんとここ大きいわねえ」

「あ、たかしちゃんのお母さん」


 お母さん、やっと追いついてきた。


「お母さんも早くお金払って。入るよ」

「はいはい」


 お母さんがお金を払い終わると、みんなでゾロゾロとプールの入り口に向かった。

 職員さんにチケットを渡して半券をちぎってもらう。プールのお金は前もってお母さんにもらっていた。なんか一緒に払ってもらうのが恥ずかしかった。お母さんとは別々で払いたかった。


「じゃあ、ここで一旦あんたたちとはお別れね」


 目の前には、男子更衣室と、女子更衣室の二手に分かれた道があった。


「そうだな、清清するわ」

「なんだって?」

「いや、なんもない」

「じゃ、後でね……」


 私たちは女子更衣室の方に入った。広い。小さな鍵付きのロッカーがたくさんあって、壁際には水道と鏡もあった。ロッカーは百円を入れたら鍵が閉められて、鍵を挿すと戻ってくる仕組みのやつだった。いち、にい、さん。私を含めて四人。あってるっけ。


「あれ、ここは?」

「こっこちゃんいないね」


 そうだ、ここちゃんがいないんだ。ここちゃんどこ行ったんだろう、おトイレかな。


「よっし、準備はおーけい! 完璧よ!」


 きらなちゃんは服を脱ぐだけで準備が完了した。黒い大人っぽい水着姿になっている。本当に大人っぽい。お母さんも似たような三角の水着を着ているけど、お母さんよりも大人っぽく見える。


「お母さん水着持ってたんだね」

「昔のだけどねー」

「よし。私の準備ももう少し」


 れいかちゃんも上の服を脱いで上だけ水着姿になっていた。やっぱりヒラヒラが似合っている。れいかちゃんは腕や脚は茶色く日焼けしていたけれど、お腹は全然焼けていなくて真っ白だった。


「麗夏、あんた素肌やっぱ白いわねえ」

「あはは、やっぱお腹だけ白くて変だよね」

「ううん、前も言ったけどなんかそれはそれでアリって感じよ。なんかエロい」

「そうならいいんだけど……」

「れいかちゃんってそんなに日焼けしてたんだね」

「夏になってから毎日水着でプール入ってるからねえ。どうしても焼けちゃうんだよねー。裸になったら水着着てるみたいになるよ」

「わあ、すごいねえ」


 みんなもう水着を着ている。私はというとまだきらなちゃんの服を着ている。私も着てくればよかった。みんな着てくるなら教えてくれたってよかったのに。


 れいかちゃんがスカートを履き終えて、私の方を見た。きらなちゃんもお母さんも私の方を見ている。みんなに見られていると着替えるのが恥ずかしい。


 とりあえず赤い自慢のリボンを外してロッカーに入れた。

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