阿瀬君がプールの入り口で腰に手を当ててポーズを決めていた
「いっちばーん!」
阿瀬君がプールの入り口で腰に手を当ててポーズを決めていた。
「はあ、はあ、ふふふ、阿瀬君変なの」
「な、ビリが何を言う」
「だって、みんな早いんだもん。追っつけないよう。はあ」
「たかしは運動音痴だなあ」
阿瀬君にばかにされた。
「むっ」
「あはは、怒った怒った。じゃ、入ろうぜー」
「たかしちゃんのお母さんまだだよ?」
「大丈夫でしょ、多分お金払ってる間に追いつくって」
「確かに。じゃあお金払っちゃいましょうか」
大人一人四千百二十円。高い。お洋服買えそう。
「入場料ってこんなに高いのね。初めて来たからびっくりしたわ。まあお母さんから先に聞いてはいたんだけどね」
「プールで遊ぶだけなのにな」
「みんなここ初めて?」
「うん。聞いたことはあったけど、私は初めてかなあ」
「僕も初めてー。市民プールなら行った事あるよ」
「市民プールはいいのよ。じゃあみんな初めてか。楽しみね」
「俺らの意見は無視かよ」
「どうせ行った事ないんでしょ。だって学校の水着しか持ってないもんね」
「いやまあそうだけど」
「俺は来た事あるぞ。小学校の時だけど」
「え? まじ?」
ただしくん来た事あったんだ。
「家族でなー、めっちゃデカかったこと覚えてるわ。後広い」
「そうなのね。楽しみねえ」
「ほんとここ大きいわねえ」
「あ、たかしちゃんのお母さん」
お母さん、やっと追いついてきた。
「お母さんも早くお金払って。入るよ」
「はいはい」
お母さんがお金を払い終わると、みんなでゾロゾロとプールの入り口に向かった。
職員さんにチケットを渡して半券をちぎってもらう。プールのお金は前もってお母さんにもらっていた。なんか一緒に払ってもらうのが恥ずかしかった。お母さんとは別々で払いたかった。
「じゃあ、ここで一旦あんたたちとはお別れね」
目の前には、男子更衣室と、女子更衣室の二手に分かれた道があった。
「そうだな、清清するわ」
「なんだって?」
「いや、なんもない」
「じゃ、後でね……」
私たちは女子更衣室の方に入った。広い。小さな鍵付きのロッカーがたくさんあって、壁際には水道と鏡もあった。ロッカーは百円を入れたら鍵が閉められて、鍵を挿すと戻ってくる仕組みのやつだった。いち、にい、さん。私を含めて四人。あってるっけ。
「あれ、ここは?」
「こっこちゃんいないね」
そうだ、ここちゃんがいないんだ。ここちゃんどこ行ったんだろう、おトイレかな。
「よっし、準備はおーけい! 完璧よ!」
きらなちゃんは服を脱ぐだけで準備が完了した。黒い大人っぽい水着姿になっている。本当に大人っぽい。お母さんも似たような三角の水着を着ているけど、お母さんよりも大人っぽく見える。
「お母さん水着持ってたんだね」
「昔のだけどねー」
「よし。私の準備ももう少し」
れいかちゃんも上の服を脱いで上だけ水着姿になっていた。やっぱりヒラヒラが似合っている。れいかちゃんは腕や脚は茶色く日焼けしていたけれど、お腹は全然焼けていなくて真っ白だった。
「麗夏、あんた素肌やっぱ白いわねえ」
「あはは、やっぱお腹だけ白くて変だよね」
「ううん、前も言ったけどなんかそれはそれでアリって感じよ。なんかエロい」
「そうならいいんだけど……」
「れいかちゃんってそんなに日焼けしてたんだね」
「夏になってから毎日水着でプール入ってるからねえ。どうしても焼けちゃうんだよねー。裸になったら水着着てるみたいになるよ」
「わあ、すごいねえ」
みんなもう水着を着ている。私はというとまだきらなちゃんの服を着ている。私も着てくればよかった。みんな着てくるなら教えてくれたってよかったのに。
れいかちゃんがスカートを履き終えて、私の方を見た。きらなちゃんもお母さんも私の方を見ている。みんなに見られていると着替えるのが恥ずかしい。
とりあえず赤い自慢のリボンを外してロッカーに入れた。




