みんな着てきたの?
確かにここちゃんはかわいい。だけど恋愛なんて全然考えてなさそうだし、えっちなことも考えてなさそう。ただ一緒にいて楽しい人たちと居るんだろうなあって感じがする。それは私がきらなちゃんやれいかちゃんといるように、ここちゃんも、おんなじような気持ちでただしくんや阿瀬君や縫合くんと一緒にいるんだろうなって。ただしくんたちもここちゃんと同じように、一緒にいて楽しいからいるんじゃないかなあ。今度ここちゃんにワンピース着せてみたいな。絶対可愛いと思う。誘っても着てくれなさそうだけど。
「ていうか、話変わるけど、水着着てきたよね?」
「私は着てきたよー! 流石にスカートは履けなかったから、あとはスカート履くだけ」
「私も着てきたー、絶対その方が楽だよねー。たかしちゃんも着てきたでしょ?」
「えええ、私着てきてないよう。みんな着てきたの?」
「もちろんよ。だって向こうで着替えるより着てきた方が早いじゃん」
「私なんて学校の日も下に水着着ていくよ。部活あるし。なんか下着よりも安心感あるしねー。水泳ない時でも水着着てるかも」
「ええー! 普段遊びに来る時も水着なの?」
「時もあるねえ。なんか落ち着くんだよねえ」
「あんたそれは変よ。下着の方が落ち着くに決まってるじゃない」
「そんなことないよ。きらちゃんもやってみって。絶対ハマるから」
「お腹出す服着たら見えちゃうじゃない。できません。っていうかたかしちゃん水着きてないのね」
「きてないよう。教えてよう。私だけ着替えなきゃじゃんかあ」
「大丈夫。着替えてるとこじっくりみてあげるわ」
「よーくみてあげる」
「みなくていいよう。ううー、着てくれば良かった」
「お母さんも着て来たわよ」
「なんでプール入らないお母さんが水着着てくるのさ! って! もう! それに着て行くなら着てくって教えてよお。教えてくれたら着てきたのに!」
「たかしちゃんは知ってるものだと思ってたわ」
「知らないよう! ばかお母さん!」
「あ! ばかって言わないの!」
「お母さんはばかだもーん」
「そんなこと言うならたかしちゃんだってばかだもんねー」
「あー、ひどい。実の娘に向かってそんなこと言って。きらなちゃーんれいかちゃーん。お母さんにばかって言われたー」
「たかしちゃんも言ってたでしょー。ちゃんと聞いてたんだからね」
「ちぇー」
「つぎ川﨑だって」
「そうね、プールまであと少しね」
川崎駅に着くと、ほとんどの人が降りて行った。
多分プールに行く人だと思う。プールのバッグを持った親子連れや、女の子たちが残っていた。
私たちと一緒だ。プール行くんだ。
ほとんど空っぽになった電車に揺られる。時たまただしくんと目があって嬉しくなる。私もここちゃんみたいに運動ができればなあ。もっといっぱい遊べるのになあ。
さっきまで人が多くて暑苦しかったけれど、電車の中は涼しくなった。
まだかなあ。もうすぐかなあ。
足を伸ばしてパタパタと上下させる。
「次はー、ひさしー。ひさしー」
「着いた! みんな! 降りるわよ!」
およそ一時間の長い電車の旅が終わった。キューッと電車が止まって左側のドアが開いた。
「はいはい、降りるわよ」
先頭に立ったきらなちゃんはれいかちゃんの手を握って電車を降りていった。私たちも後に続いて電車を降りる。改札に切符を通して駅を出ると、少し言った先にプールがあるのが見えた。結構な数の人がこの駅で降りていた。多分みんなプールに行くんだ。
「僕いっちばーん!」
ここちゃんが勢いよく駆け出した。
「あ、ずりい。俺の方が先だよ!」
「くっそ、負けるか!」
「そんな急がなくてもプールは逃げないよ」
阿瀬君とただしくんがここちゃんを追いかけて、その二人を追いかけるように縫合くんがゆっくり走っていった。
「じゃ、私たちも?」
「お先にー!」
「わああ、待ってええ」
きらなちゃんとれいかちゃんも走り出してしまった。私は必死にあとを追いかけた。お母さんはゆっくりと歩いてついて来ていた。




