シャッとカーテンが開いた
「ありがとうございます! ほら、試着室こっち!」
れいかちゃんの手を引いて、きらなちゃんが店の奥に入っていった。私も後をついていった。
「着替えられたら教えてね!」
試着室に入ったれいかちゃんにきらなちゃんが声をかけた。
「もう着替えられたー?」
「まだー」
きらなちゃんは足踏みしながら待っている。今にもカーテンを開けてしまいそうな気負いだ。開けそうになったら止めないと。
と思っていたらきらなちゃんがカーテンの中を覗き込んだ。裸のれいかちゃんが一瞬見えた気がした。
「わっ、きらちゃん、まだだってば」
「こらー、きらなちゃん、じっと待ってなさーい」
私はきらなちゃんの服の裾を引っ張った。でもきらなちゃんが抵抗してくる。
もう、ダメだってばー。
脇をこちょこちょっとしてから、きらなちゃんの肩を引っ張った。きらなちゃんは体制を崩して床に転がった。開いた足のショートパンツの隙間からパンツが見えてしまった。これはこれでやっちゃったって思った。
「いてて、もー、何すんのさー」
「な、何すんのじゃないの! 着替え終わるまで待ちなさーい! 外にれいかちゃん見えちゃうでしょ! 見えちゃったでしょ!」
「え! 見えちゃった?」
中かられいかちゃんの声がした。わわ、どうしよう。
「え、えっと。大丈夫だよー! ゆっくり着替えてー!」
「わかったー」
れいかちゃんの安堵した声が聞こえてくる。
「もう、きらなちゃんったら」
「だって早くみたかったんだもん」
「きらなちゃんが早くみてもれいかちゃんが着替えられてなかったら意味ないでしょ!」
「はあい」
私はきらなちゃんの頭をよしよしした。
「もう、怪我してなあい?」
「うん、大丈夫! 全然平気!」
「そっか、良かった」
きらなちゃんも転んじゃうからびっくりしちゃった。
「まだー?」
「もうちょっとー」
「んもう、きらなちゃん! 急かさないの!」
「だってー。暇だし」
「じーっと待ってなさい」
「じゃあさじゃあさ、たかしちゃんにこんな水着はどうかなあ」
近場にあったビキニを手に取って私にあてがって来た。
「下着みたいだから絶対着れないよう」
「何言ってんのさ! 私の第一候補なんてただの黒い下着よ? 金ピカついてるけど」
「きらなちゃんは似合ってるからいいのー」
「たかしちゃんだって着てみたら似合ってるかもしれないよ?」
「似合わないよう。私そんなにスタイル良くないし。もっと胸があったら似合ってたかも」
「じゃあ、大人になった時だねえ。高校とかになったらもっと成長してるかもしれないし。その時またプール行こ!」
「うん! 行く!」
「私も行くー!」
試着室の中から声が聞こえてきた。高校生になっても、みんなで遊べるといいな。
シャッとカーテンが開いた。中には水着になったれいかちゃんが立っていた。
「かっわいい!」
「めっちゃ似合う! やっぱそれで正解だったんじゃん?」
れいかちゃんはなぜかモジモジしている。
「なんか。恥ずかしいかも。いつもの水着と違うし、みんなに似合うって言って選んでもらったものなんて初めてだから……。いつもお母さんが選んできた服適当に着てるだけなのに。本当に似合う? お腹だけ日焼けしてないから真っ白なんだけど……」
なんだかれいかちゃんがいつもと違ってとてもしおらしい女の子みたいに見えて、かわいいって思った。
「すっごい似合ってるよ! すごくいいと思う!」
「めっちゃ似合ってるわ。お腹白いのは仕方ないでしょ! むしろそれが可愛いって感じよ。多分。ていうかナンパされるかもね、私たち」
「えええ、私たち?」
「だってたかしちゃんも可愛かったでしょ、私も可愛かったでしょ。って自分で言うのもなんだけど。そんで麗夏も可愛い。私たちってもしかして可愛い集まりなの? これはやばいわね。ナンパされちゃうわ」
「えええー、やだあ。私知らない男の人と話すのやだよう。でも私はかわいくないから話しかけられないかも。きらなちゃんとれいかちゃんならあり得るかもしれないけど」
「たかしちゃんだって可愛いわよ!」
「そんなことないよう」
「でもナンパかあ、もしかしたら私にも彼氏できちゃうかもね」
れいかちゃんが笑顔で言った。
「えええ、れいかちゃん知らない人と恋人になっちゃうの? 怖くないの?」
「ふふふ、冗談だよ。そんなことないない。絶対ないない」
ってれいかちゃん言ってたのにー。どうしよう。私たち今、知らない男の人三人に声かけられてる。
「ねえ、君らいくつ? 俺ら高二なんだけどさ、一緒に遊ばない?」
わああん、なんでこんなことになっちゃったのー!




