なんか雰囲気あるねえ。ありそうな予感!
「ね、ねえ。きらなちゃんかれいかちゃん。クレープ食べる?」
「え、いいんだよ? ゆっくり食べな? 時間は大丈夫だから。見てて楽しいし」
見てて楽しいってなんだろう。そんなに楽しませるようなことはしてないと思う。
「そうじゃなくって……。お腹いっぱいになっちゃって」
「あ、そうなの? じゃあ私食べるー。麗夏も食べる?」
「じゃあ一口だけもらおっかな」
「はい。ありがとう」
私はれいかちゃんにクレープを渡した。パクリ。と一口食べたれいかちゃんは、にっこり笑顔になってクレープをきらなちゃんに渡した。
「おいひー。やっぱりあそこはチョコバナナだね。あ、たかちゃんと間接キスしちゃった」
れいかちゃんがほんのり顔を赤らめて、私にニコッとした。かわいい、そんで恥ずかしい。間接キスなんて何も考えてなかった。れいかちゃんと間接キスしちゃった。
「じゃー私はれいかとたかしちゃんと間接キスー!」
バクっ。と大きな口でクレープを食べた。なんかもう間接キスとかそう言うのを通り越している気がして笑いが込み上げてきた。
「ふふふふ、きらなちゃんお口おっきい」
「間接キスっていうか私たち食べられちゃった感あるんだけどー」
「あはは、でも美味しいわねえ」
きらなちゃんの顔は綺麗だった。あんなに大口で食べたのになんでそんなに綺麗なんだろう。不思議だった。
「うん、ご馳走様」
私の残したクレープをきらなちゃんはペロリと平らげた。私だったらもっと時間かかってるんだろうなあって思うと、あげてよかったと思った。
「よし、いこっか。次は上だよね」
「うん、そこのエレベーター上がってすぐ辺りのところにあるっぽい」
「麗夏の水着を探せ! レッツゴー」
「ゴー!」
食器を各々買ったところの返却口に戻して、エスカレーターに乗った。
三階に着くと、きらなちゃんが「あ、ここここ、ここがジェラート・ジェラール」と声を上げた。
もふもふの服がいっぱい売っていた。外から見てもかわいい服がいっぱいだ。
「後で行こうねー。とりあえず水着先見にいこ」
「うん」
しばらく歩くと、少し照明の薄暗い水着屋さんがあった。
「なんか雰囲気あるねえ。ありそうな予感! ってか! これは?」
きらなちゃんがマネキンに着せられた水着を指差した。胸のところはカーテンみたいに布で隠れていて、少し暗めのオレンジのスカートには縦にスリットが入っている。かわいい。色的には私には似合わないけど、れいかちゃんには似合いそうだ。ていうか絶対似合う。
「胸隠れてる! めっちゃいいじゃん。かわいい。スカートもこのスリットがちょっとえっちでいい!」
「第一候補だ! あとは店の中にもいいのあるか探してみよ!」
私たちはお店の中に入って色々ある水着を物色した。前にひらひらがついた水着はたくさんあったけれど、れいかちゃんに「似合う!」と思う水着は展示されているもの以上のものは見つからなかった。
「うん、やっぱこの水着が一番可愛くて似合いそうだわね」
「でも展示品だね」
「いいじゃん、言ったら試着させてくれるわよ。私言ってくる」
きらなちゃんが店の奥へと消えていった。
「私、水着買うのって競泳水着以来だなあ。それもこんな水着買ったこともないし着たこともない」
「私もだよー。お腹出すの恥ずかしくない?」
「んー、私は平気かな。水泳で慣れちゃってる。水泳はお腹は出てないけど、それと似た感覚かなあって感じ」
「そっかあ、私お腹出すの初めて。じゃなかった。こないだきらなちゃんのお家に泊まりにいった時の帰りにお腹出てたんだった」
「何それ、またきらちゃんの思いつき?」
「そうなの。これ着てみてーってきらなちゃんが言うから着てみたら、そのまま帰ろっかって言われて。仕方なく諦めて帰ったら、そしたらきらなちゃんちの前の公園でただしくんと阿瀬君が遊んでて、みられちゃったの。恥ずかしかったあ」
「そんなことあったのね。でもそのおかげで水着もちょっとはマシになったんじゃない? もうみられたんだし、変わんないよ」
「でもプールには知らない人いっぱいいるじゃん」
「あー、それはどうしようもないね。でも多分そんなみられないよ? みんな自分たちで遊んでるんだし」
「そっか、そうだよね。じゃあ大丈夫……かな」
「そうだよ、気にしない気にしない。かわいい服着てると思っておけばいいと思うよ」
「うん! そうする」
待っていると「この水着なんですけどー……」ときらなちゃんが店員さんを連れて戻ってきた。なんだか店員さんが女の人で良かったって思った。
店員さんはマネキンから水着を脱がせてきらなちゃんに渡してくれた。




