抹茶クレープと、ほうじ茶クレープって、どっちが美味しいですか?
「ひゃあ、ごめんなさいー」
私は頭を抱えてその場にしゃがんだ。
「もう! そんなに怒ってないでしょ!」
「えへへ」
「なーに食べよっかなあー」
「迷うねえ。いっぱいあるもんねーフードコートって」
「なんであんなにあるのかねえ。全部食べたいじゃない。なのに食べられるのは一個だけなのよ? ひどくない?」
「ひどくはないと思うけど、選択肢がいっぱいあっていいじゃん。ラーメンだけだったらショックだもん」
「確かにね、そういう考え方もあるわね」
とかなんとか言ってるうちに、フードコートについた。
「わあ、クレープ屋さんだ!」
「そういえばクレープもあったわね」
「たかちゃんクレープ好きなの?」
「ううん、好きだけど、大好きってわけじゃない……。わあ、抹茶クレープもある。白玉団子入ってるんだって! 私クレープにしよっかなあ」
「えええ? ご飯食べた後に食べるんじゃなくて、クレープだけ?」
「うん、だってそんなにいっぱい食べられないもん」
「まあ確かに、たかしちゃんは少食だもんね……」
「いや、ご飯食べた後にあそこのクレープ食べれるのはかなりの大食いだと思うよ。私も無理じゃないかなあ。結構おっきいよ? あそこのクレープ」
「そうかなあ、私は食べられるけどなあ」
「きらちゃんが痩せてる理由を知りたいわ。本当に食べたものが全部胸に入ってるんじゃないの」
「本当にそうかもしれないの。最近またちょっと大きくなった気がする」
「許せないわ……。私なんて……こんなに小さいのに……。今広げて見せてやりたいわ」
「やめなさい。で、たかしちゃんはクレープにするの? 他にも色々あるよ?」
「うん、私抹茶クレープにする」
「じゃあ私たちのご飯決めにいきましょうか。たかしちゃんどうする? 買っとく? 買って席座ってる?」
「そっか、じゃあ買って席座ってるね。探しに来て」
「はあい。じゃいこっか麗夏」
「じゃ、また後でねーたかちゃん」
「うん、また後でー」
二人はフードコートの奥に入って行った。
しかし私は迷っていた。
抹茶クレープの他に、ほうじ茶クレープというものを発見したからだ。
抹茶は美味しい、苦くて、甘くて、絶対に美味しいのはわかっている。でも、ほうじ茶だ。ほうじ茶のお菓子なんて珍しい。あるにはあるけれど、専門のお店に行った時くらいしかみたことがない。
ああ、あそこの、東京のツジサト。美味しかったなあ。
じゃなくって、今はどっちにするか選ばないと。
抹茶にもほうじ茶にも白玉が入っている。二つのクレープの何が違うかと言ったら、抹茶クリームに抹茶ソースなのか、ほうじ茶クリームにほうじ茶ソースなのかの違いだけだ。
ううん、きめらんない。どうしよう……。
「お決まりでしたらご注文どうぞー」
「あ、ま、まだ考えてます……」
レジの店員さんに声をかけられてしまった。早く決めないと変な人だと思われてしまう。どうしよう。あ、そうだ。
どちらにしようかな天の神様の言う通り。
抹茶だ。よし、抹茶にしよう。
でもなあ。ほうじ茶も美味しそうなんだよなあ。
そうか、また来た時にもう片方を食べればいいんだ。じゃあ答えは簡単だ。答えは……。
ああもう!
決められない!
きらなちゃんに決めて行って貰えばよかったと思うくらい決められない。
どっちが美味しいんだろう。店員さんは知ってるかな。どっちが美味しいか知ってるかな。
……聞いて、見ようかな。
「あ、あの」
勇気を振り絞って喉から声を出した。
「抹茶クレープと、ほうじ茶クレープって、どっちが美味しいですか?」




