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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとプール
232/274

ワンピースはかわいいからいいの

「今日はお客さん少ないね」

「まあ夏休みって言っても金曜日だからねー。どっか遊びに行ってる人とかの方が多いんじゃない?」

「プールは土曜日だし人多そうだね。お盆休みも近いし」

「わんさかいたらやだなあ。ある程度にしてほしい。遊ぶの大変そうだし」

「こればっかりは行ってみないとだねえ。たかちゃん、何きらちゃんのことジロジロみてるの?」

「わっ。えっと、さっきの水着、すごい似合ってたなあって思って」

「想像してたのね。たかちゃんのえっち」

「わわわ、えっちとかじゃないよう。ただ本当に似合ってたなあって思って」

「第一候補だからね」

「うん」

「あんたたちねえ、あれ私でも恥ずかしいんだからね? あんなの流石に大人が着るやつじゃん」

「いいじゃん、似合ってるんだから子供が来ても。それにきらちゃんは胸がおっきいし大人っぽいから似合うんだよ。いいなあ大人っぽくて。私はどっちでもない感じだなあ。たかちゃんは子供っぽい感じ。ただしーが頭撫でたがるのもわかる気がする」

「あう。そ、そんなに子供っぽいかなあ」

「確かにたかしちゃんは子供っぽいわね。でもだからこそ、たかしちゃんに似合う大人っぽい水着を探してるのよ」

「そ、そうだったの? わ、私できればワンピースとかの方が……」

「ダメよ、お腹はみんな出すのよ。これは決定事項なの」

「えええ、お腹なんて恥ずかしいよう。それでなくても肩とか足とか出るのに」

「水着なんだから当然よ。とにかくお腹は絶対! ていうかたかしちゃん、肩なら今出してるでしょ」

「ワンピースはかわいいからいいの」


 今日は暑いからシャツは着ないでノースリーブのワンピースを着ている。またこの服が可愛いんだ。ちょっとデニム調で、でもそんなに硬くなくて。お気に入り。


「ということだから、たかしちゃんも麗夏もね。ワンピースなんて着させません」

「はーい」


 れいかちゃんが景気良く返事をした。きらなちゃんがこういうんだからそうなんだ。私も小さな声で「はあい」と返事をした。


「よしよし。じゃあ次はこの店ね。一緒に探しましょ」


 水着屋二店舗目。今度の店はかっこいい系よりもかわいい系が多かった。


「お、この感じはたかしちゃんの水着ありそうね?」

「ねえ、私の水着は? 私の水着は?」

「ありそうよ。あるある、絶対あるわ」

「なーんかなさそうな言い方」

「あるってば。探しましょ」


 三人集まって水着を見ていく。本当に可愛い水着がいっぱいあった。


「見て! これめっちゃたかしちゃんっぽくない?」

「わー、本当だ。これはたかちゃんだ!」


 二人が見つけたのは胸のところに大きな赤いリボンのついた水着だった。下は薄ピンクのスカートになっていて。ちょっと恥ずかしくないと思った。


「ほら、このリボンとかちょーたかしちゃんじゃん」

「プールじゃ濡れちゃうしリボンつけれないもんね」


 そっか。プールじゃリボンつけれないんだ。考えてなかった。


「たかしちゃん、ちょっと着てみなよ。私これ普通に第一候補だわ。てか第二なんていらないくらいたかしちゃんっぽい」

「わかる。でもまだあるかもしれないし取り敢えず第一候補確定だね」


 きらなちゃんに水着を渡されて、そのまま試着室へと押し込まれた。


「じゃ、着替えたら教えてね。私たち水着見てるから」

「うん」


 お洋服屋さんの試着室は使ったことあるけど、水着屋さんの試着室は初めてだった。


「全部脱ぐんだよね……」


 恥ずかしい。ショッピングモールの中の小さな部屋の中で、私は今裸になろうとしているんだ。


 ううう、恥ずかしすぎる。誰も開けないよね。


 カーテンにロックがかかってることを確かめてから服を脱いだ。


 これ、パンツは履いといた方がいいよね?


 脱いだらばっちいもんね。売り物だし。


 私はパンツの上から水着を履いた。多分、これであってるはず。上もつけて、鏡を見た。


 赤いフリルが可愛い。上にも下にもフリルがついている。そんでこの大きな赤いリボン。私のリボンよりも小さいけれど、可愛い。スカートになってて恥ずかしくないし、これがいいかもって思った。


 私もさっきのきらなちゃんみたいにカーテンから顔だけ出した。だけど二人はいなかった。


「き、きらなちゃーん」

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