完全にきらなちゃんとれいかちゃんを置いてけぼりにした
私はお店まで走った。完全にきらなちゃんとれいかちゃんを置いてけぼりにした。「たかしちゃん？」という声が聞こえてきたけれど、私の足は止まらなかった。
「わあ、かわいいー。本当にかわいい」
「もう。たかしちゃん……走るならそう言ってよ。びっくりしちゃった」
「たかちゃん史上一番早かったかも」
「たかしちゃん、店の中を走ったらダメなんだよ？」
「あ、そっか。ごめんなさい」
私はブラウンのワンピースを見ながら返事をした。
「だめだ、ほぼ聞いてない」
「聞いてるよう。無視なんてしないよう」
かわいいなあこのワンピース。ちょっと丈が短くていい感じ。胸のとこについてる六つの大きいボタンもかわいい。
「この店かあ、私入るの初めてだわ。確かにたかしちゃんっぽいね」
「うん、たかちゃんっぽい。かわいい感じだね」
「麗夏も似合いそうね、このトップスとか着てそうだもん」
「わー、いいね。でも私の服はほとんどお母さんが選んでるからねー」
「ええ！ れいかちゃんお洋服自分で選ばないの？」
「うん。ほとんどお母さんが買ってきたの着てる。服も今はあんまり興味ないかなあって感じ」
「じゃあお母さんのセンスがいいのね。いつも麗夏っぽい服だし、似合ってるし。じゃあさ、私の服とかどうなの？ 着れる？」
「着れるよー全然。きらちゃんの服かわいくてかっこいいよね」
「私、本当はかわいい服きたいんだけど似合わないんだよねえ」
「きらなちゃんこういうのとか似合うと思うけどなあ」
私は上下セットアップの薄いグリーンの服と薄いブラウンのスカートを取ってきらなちゃんに当ててみた。
「絶対似合わない！ 全然ダメ！ そもそも足出てないじゃん」
「足は出ないよう。スカートで隠れるんだよ？」
「足は出さないと！」
「こういうかわいい服で足出すの難しいと思うなあ。でもきらなちゃんの服かわいいと思うよ？ かっこよさもあるけど。今もかわいいよ。ショートパンツにノースリーブ」
「いやたかちゃん、これは可愛いじゃなくてかっこいいだよ。流石に」
「そっかあ、きらなちゃんがかわいいからそう思っちゃうだけかあ」
「ああああのねえ、あんたたち。私だって照れる時は照れるのよ？ あんまり大きい声でかわいいとかかっこいいとか言わないで！」
「なんでえ」
「かっこいいじゃん」
「もう！」
私たちはいろんな服を体にあてがって、似合ってる。とか似合ってない。とかをして遊んだ。今日はお金がないから買えないからごめんなさいをしてお店を出た。
「楽しかったー。やっぱりＳＭ４はかわいいなあ」
「うん、たかしちゃんっぽかったねえ。私には似合わないなあって感じ。れいかには似合いそうだったね」
「もしかしたらここの服持ってるかもって思ったよね。お母さんが買ってくるからわかんないけど。もしかしたらがある」
「今度探してみて！ あったら次遊ぶ時着てきてほしい！」
「たかちゃんがそういうならまあ、いいけど」
「やったー！」
「さ、次行こっか。水着屋まだ一軒も回ってないよ」
そうだった。水着を買いに来たんだった。あとパジャマも。帰る時間も考えると早く選んで店を出ないと真っ暗になっちゃう。
「水着の店ってこの先よね？」
「うん、この先にあるよ」
どんな水着が売ってるんだろう。水着って学校の水着しか着たことないから恥ずかしい感じがする。
「ここここ、ほら、水着売ってるでしょ？」
「本当だー。いっぱい売ってる！」
「かわいい。水着ってこんなにかわいいんだ」
