痛いのは確かに怖いけど、かわいいもののためなら仕方ない
「いろんなお店があるねえ。全部入ったことある?」
「全部はないかなあ、興味あるとこだけ」
「私も、全部はないなあ」
「そっかあ。そうだよね。じゃあ、ここは?」
私はちょっと暗めのアフリカン?なお店を指差した。
「入ったことないねえ。たかしちゃん、ここ入りたいの?」
「だって、もしかしたら可愛い服とか水着があるかもしれないよ?」
「たかちゃん、意外と挑戦的だねえ」
「普段は入らないけど、みんなと一緒なら入れるなあって思って。どう、入ってみない?」
「たかしちゃんがそこまでいうなら……」
「入ってみよっか……」
入り口には、大きくて丸い、木のビーズみたいなのがいっぱい吊り下げられていた。中に入ると、陽気な音楽が流れていた。
「わあ、みて、これ髪飾りだよ」
「すごいねえ、全部違う模様だ」
アフリカンな装飾品がたくさん置いてあった。なんだか可愛いけど、ちょっと民族的な感じがした。「これたかしちゃん似合いそう」ときらなちゃんが極彩色のネックレスを手に取った。
「えええ、これは似合わないよう」
私は一応つけてみた。ふふふ、似合わない。
「あはは、たかしちゃんにあーう」
「たかちゃん変なのー」
「もう。きらなちゃん! 似合ってないでしょ!」
「あははは、楽しいね、意外とこういう店もいいねえ。あ、みてみて、この帽子とか私に合わない?」
きらなちゃんは少し破けた帽子をかぶって見せた。
「わ、にあーう、それは似合うよきらなちゃん!」
「きらちゃんいい感じ。なんかかっこいい感じ!」
「麗夏にも何かいいのないかなあ……。あ、このTシャツとかどう?」
きらなちゃんは店の奥から、アフリカンな男の人の横顔が描かれたTシャツを持ってきた。
「あはは、きらなちゃん、それは似合わないよう」
「いいじゃん、ほら、当ててみて」
「こう?」
れいかちゃんには抜群に似合っていなかった。
「あははは、だめ、お腹痛い」
「ふふふ、れいかちゃんは今後絶対そんな服着たらダメだよ?」
「着ないよー。もうきらちゃん、ちゃんと返してきて」
「はあい」
楽しかったけれど何も買わずにアフリカンな店から出て、水着屋さんに向かって歩き直した。
「いろんなお店があるねえ」
「でも趣味じゃないから入んないねー。さっきの店は意外と楽しかったけど」
「あ、ほら、アクセサリーの店とかあるよ?」
「アクセサリーかあ。あんまつけないよねー」
「私も、このリボンくらいかなあ」
「そっか。たかしちゃんはいつもアクセサリーつけてるんだね」
「たかちゃんのはもう体の一部って感じ」
確かに、もうずっとつけてるから。つけてない方が変な感じがする。
「ん? って! きらなちゃんも髪結んでるリボンとシュシュはアクセサリーだよ! れいかちゃんもヘアピンつけてるよ!」
「でもさ、アクセサリーってさ、ブレスレットとかネックレスとか、ピアスってイメージない? ヘアゴムとかはアクセサリーって感じがしなーい」
「確かに。きらなちゃんはピアスしないの? 似合いそうだけど」
きらなちゃんのお母さんは両耳にピアスをしていた。とても似合っていたからきらなちゃんにも似合うと思う。
「だって穴開けるの痛そうじゃん。無理無理。私はしてもイヤリングかなあ。ま、とりあえずアクセサリーはいらないかなー」
「痛いの怖いもんねえ」
「れいかちゃんはピアスしないの?」
「うーん、今はしないかなあ。大人になって、開けたかったら開けるかも」
「そっかあ、私もそうかも。可愛いピアスとか見つけたら開けるかも」
「たかしちゃん意外ね。痛いのとか絶対ダメかと思ってたわ」
「そうかなあ。ファッション好きだし、本当にお気に入りのがあればって感じだなあ」
痛いのは確かに怖いけど、かわいいもののためなら仕方ない。
「なるほどねえ。じゃあたかしちゃんが開けたら私も開けよっかな」
「いいなー。そうなったら私も開ける!」
「わ、私がきっかけだ。なんか緊張する」
「でもだいぶ先の話だろうねー。中学も高校もピアスだめだろうし」
「そうだね。高校卒業してからかー。長いなあ」
みんなで遠い目をした。
「あ、あれSM4じゃない?」
「どれどれ?」
「どこどこ?」
「わあー! 久しぶり!」




