私はちょっと誇らしげだった
「ただいまー」
「たかしちゃああん」
玄関で待っていたお母さんが私に飛びついてきた。まただ。学校に泊まった時もそうだった。
「はいはい、よしよし。寂しかったんでしょ」
「寂しかったーあ」
「たった一日でしょ。もう、お母さんは。ご飯はどうしたの?」
「もうできてる」
「みんな食べた?」
「たかしちゃん待ってた」
「そうなの? ありがとう。じゃあこんなところでこんなことしてないで居間に行こうねえ」
私はお母さんをあやす様に居間に連れていった。
「お姉ちゃん遅い! 僕お腹減った!」
「はいはい、ごめんね。もう帰って来たからね」
「ていうかお姉ちゃんなんできらなちゃんみたいな格好してるの?」
そうだった、忘れてた。きらなちゃんの服なんだった。
「あのね、これはね、きらなちゃんに借りたの」
「ふーん、そうなんだ。お腹減ったー、お母さん、お姉ちゃんから離れて早くご飯!」
天は私の姿を見て変だとは言わなかった。
「ねえ天、お姉ちゃんかわいい?」
「かわいいよう」
「お母さんじゃないの! お母さんはご飯運んでご飯入れて!」
「はあい」
「で、どう? 可愛い?」
「別にー。ふつー」
昔はお姉ちゃんかわいいって言ってくれたのに、ほんと生意気なんだから。
「ていっ」
私は天の頭をチョップした。
「痛いなあ。何さあ」
「天はさあ、好きな人とかいるの?」
「えーっとお」
「あー、女の子でだよ?」
「女子かあ。うーん、そうだなあ。みかちゃんはかわいいと思う」
「かわいいだけ?」
「うーん、よくわかんない」
「そっか好きとかじゃないのかあ。まだまだお子ちゃまだなあ天は」
私はちょっと誇らしげだった。
「お姉ちゃんはただしくんでしょ! 知ってるもんねー!」
「そうだよ、お姉ちゃんはただしくんが好きなの。あときらなちゃんもね」
「きらなちゃんは女の子だもん、なしだよ! 男子なら僕もいっぱいいるもん!」
「お友達は大切にしなさいねー」
「お姉ちゃんに言われなくってもするもんねー!」
「よしよし」
私も、お友達のこと大切にしなくっちゃな。
「わああ、撫でるな!」
「いいじゃんちょっとくらい」
きらなちゃんとただしくんだけじゃない。れいかちゃんも阿瀬君も、ここちゃんも、縫合くんも。もちろん天文部の後輩も。お母さんやおばあちゃん、天だって大切にしなくっちゃ。
「なんかやだ」
「お姉ちゃんなのに?」
「お姉ちゃんだからなんかやだ!」
「ていっ」
また天の頭にチョップした。
本当にきらなちゃんの家に泊まって楽しかったなあ。
明後日はお買い物に行って、明明後日はプールだ。
明後日、ただしくんたちお買い物くるかなあ。来たらいいのになあ。
でも、これなくってもいいんだ。だってプールの日には絶対に遊べるから。
楽しみだなあ。
「はーい、お待たせお待たせ。ご飯持って来たよー」
私は楽しみな気持ちを膨らませながらご飯を食べた。
「いっただっきまーす!」




