女の子の嗜みだよね
「どうしたの、二人なんて珍しいわね、ここと一は?」
「あれ、綺羅名じゃん、あと、そっちの、たかしか? 一とここは帰ったよ。時間的に」
「そ。みて、たかしちゃんよ。可愛いでしょ。ね?」
「ねって言われても、綺羅名の服着てるんだなあとしか。なあ忠」
「忠? わかってるわよね?」
「う、か、かわいいと思うけど」
「けど? けどって何?」
「かわいいよ。これでいいんだろ」
「なんか投げやりだけどいいわ。たかしちゃん、可愛いって」
恥ずかしくって私はその場にしゃがみ込んだ。
「こらこらたかしちゃんパンツ見えちゃうよ。気をつけなさい」
「わう」
きらなちゃんに言われて慌てて立ち上がった。ただしくんの顔がみられない。お腹とかみられちゃってる。可愛いって言われた。
「たかしって恥ずかしがり屋だよな。彼氏に可愛いって言われただけでそんなに慌てるか?」
「まあ……いや、なんもない」
「何今の空白。なんか考えたっしょ」
「いや、なんもない」
「わかんないの蹴人、まだまだ子供ねえ。忠は照れて慌ててるたかしちゃんも可愛いって思ったのよ。ねえ?」
「うっ、なこと思ってねえよ」
「じゃあ可愛くないっていうのね。たかしちゃんかわいそうにねえ」
「そんなことも思ってねえよ」
「素直に言いなさいよ」
「か、可愛いと思ってるよ」
ううう、恥ずかしすぎて死んじゃいそう。なんでこんなみんなの前で……。きらなちゃんんだ。きらなちゃんが遊んでるんだ。
「きらなちゃん、帰らないの?」
「あ、そうだったわ。ていうか、あんたたち、明後日の買い物付き合いなさいよ。なーにが水着はあるから行かないーよ。どうせ休みでやることないんでしょ。明後日この公園に朝十時に待ち合わせだから。出発は十時二十分だから。あんた達だけでも来ること! いいわね! もちろん一とここを連れてきてもいいわ。もちろんだけど遅刻したら許さないんだから。さ、行こっ、たかしちゃん」
「う、うん。ただしくん、阿瀬君ばいばい」
「お、おう」
二人は顔を見合わせていた。どうするんだろう、来るのかなあ。来ないのかなあ。来たら楽しいと思うのになあ。
「ね、きらなちゃん」
「ん? 何?」
「来るといいね」
「そうね。どうせ来ないだろうけど。どうその格好、誰も変って言わなかったでしょ? むしろ忠が可愛いって言ってたわ。ちょうどよかったわね、見せられて」
「ちょうど良くないよう。すっごい恥ずかしかったよう」
「でも多分、二人ともたかしちゃんのパンツ見たわね」
「えええ、本当?」
「ミニスカだからねえ、気をつけてしゃがまないと丸見えよ。今度ミニスカ講座開いてあげる」
「ううう、お願いします。ただしくんにまたパンツ見られちゃった」
「また? 前はどこで?」
「前はただしくんの部活の練習見にいった時。見入っちゃってパンツ隠すの忘れてたの」
「ばか、何してんの、ちゃんと隠しなさい。女の子の嗜みよ」
そうだよね。女の子の嗜みだよね。もう、私のばか。
「うん、ちゃんと隠す」
「たかしちゃんは見せパンとか履かないの?」
「うん、いつも着るワンピースとかスカートは裾が長いから見えないし、なんだか見せパンはいた方が見えそうな気がして……見せパンでも恥ずかしいから履かないの」
「まあ確かに、一理あるわね。私は一応履くときは履くけど、なんか見せパンって可愛くないんだよね。だから最近はあんま履いてないわ」
「ミニスカートなのにすごいなあ」
「気合よ、あと慣れね」
「気合と慣れかあ。難しそうだなあ」
「そんなことないよ。簡単だよ。気をつければいいだけだからね。あと、どのポーズを取ればパンツが見えるか覚えとくといいよ」
「そっかあ、そしたらパンツ見えるポーズ取らなければいいんだもんね」
「そうそう。とか言ってるうちにたかしちゃん家着いちゃったー」
「本当だあ。パンツの話してた。ふふふ」
「じゃあ私明日十時にたかしちゃん家くるね?」
「うん、待ってるね!」
「バイバーイ! また明日!」
きらなちゃんがスカートを翻して来た道を戻るように駆けていった。
あ、パンツが見えた。
きらなちゃんでも見えることあるんだなあ。
楽しかった二日間があっという間に終わってしまった。




