ちょっとお腹ぷにっとしてるけど、それが可愛いわ
「待って待って、自分でするから。きらなちゃんあっち向いといて」
「わかったわ」
「絶対こっちみたらダメだからね?」
「わかってるって」
私はきらなちゃんがあっち向いている間に、渡された服を見よう見まねで着てみることにした。えっと、ブラはこれに変えるんだっけ……。で、これが……本当にお洋服なのかなあ。枕カバーにも思えてきた。ふふふ、そう考えると面白い。枕カバー見たいのを着て。スカート、スカートは黒いスカートだ。を履いて……。
よし。
「にあーう!」
「ちょっときらなちゃん! 見ないでっていってたのに!」
きらなちゃんがいつの間にか私の方を見ていた。もう、あっち向いてっていってたのに。
「まあいいじゃん、それよか似合うねえ、やっぱ白の方が似合うわ」
「このお洋服、肌にぴっちりでちょっと恥ずかしいよう」
「そういう服なのよ。体型を出すの。いいじゃん、たかしちゃんスタイルいいよ。ちょっとお腹ぷにっとしてるけど、それが可愛いわ」
「やあん。お腹みないでー」
私は両手でお腹を隠した。
「せっかくお腹出る服なのに隠したら意味ないじゃん。ほら出して出して」
「ううう、恥ずかしいよう」
「恥ずかしがってる顔もナイスよ」
「ふふふ、変なおじさんみたい」
「とかなんとかしてる間にもう六時五十八分ね……」
「ほんとだ、着替えないと」
「いやあー、本当はそんなつもりなかったんだけどなあ」
「なになに、どうしたの?」
きらなちゃんがいきなり頭を抱えて上を向いた。
「本当に、仕方ない、その服貸したげる。だって着替える時間がないんだもん」
「あ、あるよ。時間あるよ。ちょっとくらい大丈夫だよ」
「ああー、本当に仕方がない。貸したげる! もうこれは苦肉の策なのよ!」
わかった。きらなちゃんが私をこの格好で外に出させようとしている。
「いやー、ほんと残念だわ、私その服明日着たかったのになあー」
「きらなちゃん、着替えられるってばあ」
「よし、たかしちゃん、帰りましょうか」
きらなちゃんは床に置いてあった私のワンピースとブラを私のカバンの中にしまった。
「何してるのさあ。こんな格好じゃ外出られないよう」
「出れる出れる。さ、行こっか。私送っていってあげるから」
きらなちゃんが私のカバンを背負って部屋を出た。もうだめだ。逃げられない。このまま帰るしかない。きらなちゃんにはめられた。
「わあん、待ってよきらなちゃん。わかったから、わかったからー」
恥ずかしい格好のままきらなちゃんとリビングに向かった。
「昨日と今日と、一日ありがとうございました」
服の裾を下に引っ張りながら挨拶をした。あんまり引っ張ると胸がさらけ出されてしまう。とんでもない服だ。
きらなちゃんのお母さんは本当に優しかった。化粧も上手だった。
「あら、可愛い格好してるわね。その格好で帰るのかしら?」
「はい。きらなちゃんが仕方ないなあって言って。また、お化粧教えてください」
「いつでも来なさいね。いつでも教えてあげるから」
「ありがとうございます。またおじゃまします」
「よし、行こっか」
「ねえきらなちゃん……。本当にこの格好で行くの?」
「うん、練習よ練習。こういう服も着れるようになった方が絶対いいもん。たかしちゃん似合うし。だから練習ー」
「うう、おじゃましましたあ」
「はい、また来てね」
きらなちゃんに手を引かれてお外に出た。お外は真っ暗だったけれど、公園は明かりがついていて明るかった。
「あれ? あれ蹴人じゃないかしら」
「わわわわ、ちょっときらなちゃん。ばかばか」
きらなちゃんは私の手を引っ張って公園の中に入っていった。中には阿瀬君とただしくんがいた。サッカーをしているみたいだった。




