よっしゃークリアー!
八の三で負けてしまった。
「おしまい?」
「うん、もう残機ないし、ここでゲームオーバーだ」
「残機って何?」
「ほら、右上にタマオの顔があるでしょ? あそこが残機数で、ゼロになったらゲームオーバーなの。くっそー、いっつもあそこで負けるんだよなあ」
きらなちゃんは悔しがっていた。
「いいこいいこ」
「ふわー、なんか幸せー。じゃあ次、たかしちゃん、どこまで行けるかやってみよー!」
「はあい」
私は何度も一の一を繰り返した。歩くキノコにぶつかり、穴に落ち、亀さんにぶつかられ何度も何度も繰り返しているうちに、だんだん操作方法がわかってきた気がする。
これはいける。
って思ったのに、最後まで一の一をクリアすることはできなかった。
「あはは、たかしちゃんゲーム下手くそだー」
「むう、ゲームほとんど初めてだもん……。でもなんだかスポーツと同じような気がする。私ゲーム多分苦手だ……」
「運動音痴にゲームも含まれるってこと?」
「うん、多分」
「確かに、蹴人も忠もここもゲームうまいわね。一も上手かったはず。一は卓球うまいしねえ」
「そうなの? 縫合くんって卓球うまいんだ」
「小学校の時部活で卓球やってたらしいわ。あんまり知らないけどね」
「お裁縫もできてスポーツもできるなんてずるいなあ」
「でも結構遊んだねえ。二時間もタマオやってたわ」
「楽しかったね」
「楽しかったんだ。それならよかった。とりあえず部屋戻ろっか」
「もうゲームしない?」
「たかしちゃんが苦手っぽいしねー」
「でもみてるのも楽しいよ?」
「そう? それなら私もう一回チャレンジしようかな?」
「いいよいいよ! 私応援する!」
「やったー! じゃあ頑張るぞー」
きらなちゃんは一の一からタマオを始めた。私があんなに頑張ってもクリア出来なかった一の一をあっさりクリアした。そこからきらなちゃんは怒涛の快進撃をみせ二回負けただけで八の三までたどり着いた。
「よし、残機後3ある。絶対クリアする!」
「頑張れきらなちゃん!」
慎重に、慎重に進み、さっきと同じ場所でまた負けてしまった。
「ああん、くそー。あそこむずいわ」
今度こそ、とテンポよく突っ込んでいき、また同じ場所で負けてしまった。
「なんでいっつもあのタイミングで亀降ってくるのよ。くそー、あと一機しかないわ、これで負けたらラストよ」
たかしちゃんの目は真剣そのものだった。まるで獲物を狙うライオンのよう。
「よっしゃーあ! 抜けた! あとはゴールするだけ!」
ついに、詰まっていたところを掻い潜った。
「頑張れ、頑張れ」
「わっ、あっぶない。こんなとこに穴が。でも大丈夫! よっしゃークリアー!」
「やったねきらなちゃん!」
「やったやったー! やっとあそこクリアすることできたよ! たかしちゃんのおかげ!」
「ええー? 私なのもしてないよう。きらなちゃんの技術だよ!」
「へへへ、ってああ!」
タマオがキノコに当たって下に消えていった。しゃべってる間にゲームが始まって、キノコが迫ってきていたみたいだった。
「ああん、ゲームオーバーなっちゃった。せっかく八の四まで来たのに」
「私が喋りかけちゃったからだ。ごめんね」
「ううん、そんなことないよ。私がよそ見したからだよ。はー楽しかった。たかしちゃん楽しかった?」
「うん! すっごく楽しかった! じゃあよかった! もう六時かー、あと一時間くらいで帰んないとね」
「そうだねえ。夜だもんねえ」
「部屋行こっか」
「うん」
きらなちゃんはコントローラーを置いて、リビングのドアに向かった。




