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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとお泊まり
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タマオの綺麗なジャンプはキノコを華麗に通り越えた

「もちろん! ほら、始まったよ! ほら、早くコントローラー持って」

「わああ、えっと、どうやって動くの?」


 どのボタンを押したらいいか全然わからない。私は軽くパニックになった。


「矢印のボタンの右と左だよ。ジャンプはAでダッシュはB」

「ええっと、右に行って……。わああキノコがきたよ! どうしたらいい?」

「A! A押して!」

「え、えー!」


 きらなちゃんに言われた通りにAボタンを押した。タマオがその場でジャンプをして着地した。そして、トコトコ歩いてきたキノコにぶつかった。タマオは飛び跳ねて画面の下に消えていった。


「ああ、残念、たかしちゃん負けー」

「えええー。Aボタン押したのにい」

「タイミングが早かったわね。ちゃんとタイミングを見計らって飛ばないとね。もう、たかしちゃんもっと本気で取り組まないと!」

「ほ、本気だよう。次は、次は絶対勝つから!」


 キノコさんには申し訳ないけど次は絶対踏んづけたい。


「よーし、その調子だ! ちなみに右押しながらジャンプしたら移動しながらジャンプできるからね。その場でジャンプするよりもいいよ」

「なるほどお。よーし、今度こそ!」


 またゲームが始まった。同じステージだ。今度こそ負けない。

 右に進んでいくと、またキノコが現れた。


「えっと、右に移動しながら、タイミングを見計らって、ジャンプ」


 タマオの綺麗なジャンプはキノコを華麗に通り越えた。


「あ、行きすぎちゃった」

「あはは、いいのいいの。敵は倒すか通り越せばいいのよ。最終的な目標はゴールだからね」

「そっか、じゃあ、わっ!」


 右から来ていた新しいキノコにぶつかって負けた。タマオがまた下に消えていった。


「あー、よそ見してるからー」

「ごめんなさい」

「まあいいわ、一歩前進ね。ね? 楽しいでしょ?」

「うん、ちょっと楽しい」

「ちょっとかー。どうする? 別のゲームする?」

「ううん、タマオする。ゴールしてみたい」

「おおっ、いいねえ。その粋だよたかしちゃん。じゃあ次私がやるから見てて、見て勉強するのもありだと思うの」


 確かに、きらなちゃんの上手いプレイを見たらやり方がわかるかもしれない。


「じゃあきらな先生お願いします」

「任せたまえ」


 きらなちゃんのプレイは全く参考にならなかった。ゲーム画面じゃなくて、きらなちゃんが操作するコントローラーの手を見たらすごい速い動きで動いていた。そんな動き私にはできない。これは無理だと思った。


「全部で八の四までステージがあるのよ」


 と言ったきらなちゃんは何度か落ちたりキノコに当たったりして負けたけれど今現在六の三まで来ていた。多分、一から八までステージがあって。その中でも四つに分けられているみたいだった。

 クリアまで後もうちょっと。もう私では絶対にクリアできないくらい敵がわんさかといて、きらなちゃんはその全てを踏んづけていった。ぽこっ、ぽこっと小気味いい音がなる。きのこや亀さんを踏んだ時の音は癖になりそうだ。


「たかしちゃん、こっからやる?」


 きらなちゃんは七の一で私に交代しようとしてきた。


「無理無理無理無理だよう。そんなの絶対無理だよう」


 私は必死に拒んだ。こんなとこすぐに負けちゃう。絶対に無理だ。


「あはは、仕方ないなあ、じゃあ私がやるね」


 きらなちゃんはどんどんどんどん右に進んでいった。七の一をクリアして、七の二をクリアして、七の三も七の四もクリアした。


「ふうー、後四つー」


 きらなちゃんは深呼吸をした。真剣な表情だった。これは声かけられない。私は黙ってきらなちゃんのプレイを見守った。


「ああああ!」

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