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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとお泊まり
220/274

カレー来たわーって言いかけた

「だって恥ずかしいもん」

「昨日でちょっと慣れたでしょ。慣れるもんよ?」

「そっかなあ。でもミニワンピとかたまに可愛いのがあって羨ましくなるんだよねえ」

「着ればいいじゃん! 絶対似合うよ! たかしちゃんかわいいもん!」

「かわいくはないけど……。でも、今度見つけたら買ってみようかなあ」

「うんうん、そうしよ。その代わり、足開いたりとかしちゃ絶対だめよ? パンツは絶対に見せないようにね」

「はあい」


 きらなちゃんすごいもんな。外で遊んでる時も、うちで遊んでる時も、絶対パンツ見えないもん。私は裾の長いワンピースだから、そんなに気にすることはないけど。ミニは気にしないとだもんなあ。


「カレー食べに降りよっか」

「うん」


 部屋のドアを開けるとカレーのいい匂いがした。多分、きらなちゃんのお母さんが温めてくれてるんだ。

 リビングのダイニングテーブルに座る。きらなちゃんが前で足をバタバタさせている。


「まーだー」

「今起きてきたのにまだはないでしょ」

「私二時間前に起きてたもんねー、寝てたのはたかしちゃんだもん」

「きらなだって部屋に篭ってたんだから同じです。たかしちゃんは悪くないのよー」

「は、はい……」


 私が寝坊したからきらなちゃんのご飯が遅れちゃったんだ。


「ごめんね、きらなちゃん」

「何がー? 別に謝ることなんてないよ。何? 私の服着なかったこと?」

「いや、そうじゃなくて」


 きらなちゃんは私が寝坊したことに対して何も思っていないみたいだった。本当、きらなちゃんは優しいなあ。


「やったー! カレー来たわー! たかしちゃんもほら、いっせーのーで!」

「カレー来」

「いただきます!」


 カレー来たわーって言いかけた。


「たかしちゃん今なんて言った?」


 カレー来たわーって言いかけた。


「な、なんでもないよ。食べようねえ」


 いただきます。と誰にも聞こえないように小さい声で言ってからスプーンでカレーを掬って食べた。うん、美味しい。昨日よりも美味しくなってる気がする。あ、スプーンが昨日と違う。持つところに金属製のリアルな飛行機がついてる。お皿も違う。昨日は何かの花柄だったけど、今日は別の何かの花柄だ。女の子として、お花に詳しくないのってダメかなあ。


「ねえきらなちゃん。きらなちゃんはお花にくわしい?」

「うん? 全然だよ。アサガオくらいしかわかんない。あ、あとタンポポね」

「そっかあ。女の子としてお花知らないのってダメかなあ。私もきらなちゃんと同じくらいしかお花知らないの」

「別にいいんじゃない? たかしちゃん裁縫できるし、女子としてもう完璧でしょ。結婚した後は料理は忠に任せておけば」

「ええ、ただしくんに任せるの? ただしくん料理できるのかなあ」

「ふふふ、結婚は否定しないのね」

「あああ、違う違うー、そうじゃなくってえ。結婚はしないよう。とも言えないけど……」

「あはは、たかしちゃんかーわい」

「そうじゃなくってお花のお話だもん。お花の名前全然知らないなあって」

「私も知らないもん、別にいいんじゃない。女の子だからあれ知っとかなきゃなんてないでしょ。逆に、男の子だからゲーム詳しくないととかもないと思うよ」

「そっか、そういうもんかあ」

「いいから食べなさい。たかしちゃん食べるの遅いんだから」

「はあい」


 私はカレーライスをよく噛んで食べた。


「ごちそうさまでしたー」

「ごちそうさまでしたあ」

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