やだやだー、せっかくのお化粧がー
「でも眠いんでしょ?」
「ま、まだ寝なはわああ」
「あははは、喋ってる途中なのにあくび出てるじゃん。もう寝よっか。お化粧したままだとお肌荒れちゃうから落としに行こ」
「やだー。まだ起きてるもん。きらなちゃん! アルバム出して!」
「だーめ、もう眠いんだから。寝るよー、ほら、いくよー」
きらなちゃんが私の手を引いて部屋のドアへ向かおうとする。
「やだやだー、せっかくのお化粧がー」
「またすればいいでしょ。そのまま寝る方がダメですー」
「むう、せっかくお化粧してもらったのにい」
「でも眠いんでしょ?」
「眠くない!」
「本当に?」
「本当だよ! あくびだって出ないもん。はわああ」
「あはは、出てるじゃん。もうダメー、さ、いこ」
「ううう」
私はきらなちゃんに引っ張られて部屋を出た。階段を降りてまた洗面所にきた。
「これね、メイク落としだから。まずこれでメイク落として。その後で洗顔するのよ」
「やだあー。お化粧落としたくなーい」
「もう! いつからそんなわがままになったの! たかしちゃん、目を瞑って?」
「お目々? はい」
私は目を閉じた。すると、ほっぺにぬるっとした感触がして驚いて目を開けた。
「なになに?」
「ん? メイク落とし塗ってあげた」
「あああん。なにすんのさー! せっかくのお化粧があ!」
「はい、もう諦めて化粧落としなさい」
「むう、きらなちゃんのいじわるー」
「いじわるじゃないの。もう寝るの。私にはたかしちゃんを寝かしつける役目があるの」
私は仕方なくメイク落としを手に取って、顔に塗りたくった。多分目のところとかはしっかり洗わないといけないと思って念入りに擦った。一度お湯で顔をすすいでから、石鹸で泡を作って顔を洗った。
「はい、タオル」
「ありがと」
顔を拭いて前を見ると、鏡にはいつもの私が写っていた。はあ、かわいくない。残念だ。
落ち込んだままきらなちゃんの化粧落としを待って、部屋に戻った。
「たかしちゃん壁際とそうじゃない方とどっちがいい?」
「落ちたくないから壁際がいいー」
「仕方ないなあ、じゃあそっち側寝転んでいいよ」
「わーい、きらなちゃんのベッドだー」
私はきらなちゃんのベッドに寝転んだ。
「たかしちゃん、リボンリボン」
「あ、忘れてた。きらなちゃんとってー」
「もう、子供みたいだよたかしちゃん!」
「えへへ、お世話されちゃったー。きらなちゃん、早くこっちこっち」
「はいはい。電気消すよー」
「はあい」
「さ、寝ようねー」
きらなちゃんが私の横に寝転がって目を瞑った。
次に目を開けた時、窓の外は明るかった。




