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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとお泊まり
215/275

にゅうえきってなんだろう

「わあ、このきらなちゃんちっちゃーい! かわいいー。これ何歳? 何歳?」

「えっとねえー、この私は二歳ね」

「二歳! かわいねえかわいいねえ。じゃあこっちは?」

「こっちも二歳ね」


 コンコン。

 部屋のドアがノックされた。


「はーい」

「メイクしにきたわよー」

「だって、じゃあアルバムはまた今度ね」

「ああん、かわいかったのにい。また後でみーよっと」

「はいっていいよー」

「お邪魔しまーす」


 きらなちゃんのお母さんの両手には大きめバッグがあった。多分、お化粧の道具が入ってるんだ。


「まずどっちからメイクする? それとも教えるから自分でする?」

「私は自分でするー! たかしちゃんは?」

「えっと、私、お化粧ほとんどした事なくて……」

「じゃあまずは私がたかしちゃんのメイクしてあげるね。またいつでもいらっしゃいな、その時は自分でどうやるか教えてあげる。今日はメイクしたらどんなになるか知るところから始めましょ」

「はい」


 また来ていいって。嬉しい。今度は自分でできるように教えてくれるって。嬉しい。


「じゃあまずはヘアバンドを使って前髪を上げましょう。たかしちゃんはリボン外した方がいいかもね」


 リボンを取って。横に置いた。渡してもらったヘアバンドで前髪を上げておでこを出した。


「はい、じゃあ二人とも、下に行って洗顔してらっしゃい」

「はーい」

「は、はい」


 まずお顔洗うんだ。いきなりお化粧じゃないんだ。私はきらなちゃんの後について行って洗面所に向かった。洗面所に着くと、きらなちゃんがタオルを出してくれた。


「ありがと」

「まず私が洗うね」

「うん」


 きらなちゃんは石鹸で泡を作って顔を洗った。今つけた泡を水で流してタオルで拭いて、綺麗さっぱり。


「石鹸、これ使っていいの?」

「いいよー」


 私も同じようにして石鹸に水をつけて泡立てた。泡立てた石鹸を顔に塗って汚れを落としていく。と言ってもさっきお風呂に入ったばかりだから多分そんなに汚れてないと思う。水で顔の泡を洗い流して、さっきもらったタオルで顔を拭いた。


「よし、じゃあ部屋に戻ろっか。タオルはランドリーボックスの中に入れといて」

「はあい」


 顔を洗ってさっぱりした。軋まない階段を上がってきらなちゃんの部屋に戻る。きらなちゃんの部屋のローテーブルにはいろんな化粧道具が広がっていた。


「たかしちゃん、乳液とかつけたことある?」


 きらなちゃんのお母さんの隣に座るときらなちゃんのお母さんに聞かれた。にゅうえきってなんだろう。何の液だろう。牛乳みたいなのかな。


「えっと、つけたことないです」

「あら、本当に? いいわねえ、こんなにもっちりしてて。若いって羨ましいわ」


 私のほっぺをぷにぷにしながらきらなちゃんのお母さんが言った。


「きらなちゃんのお母さんのお肌綺麗だと思います」


 本当にそう思う。すごくツルッとしていて綺麗だと思う。


「あら、すっぴんを褒められると嬉しいわねえ。じゃあまずは顔にこの化粧水を塗っていきます」

「はーい」


 きらなちゃんが化粧水と書かれたボトルから手に液体を出すと、その液体を顔に塗り始めた。ぺちぺちと叩くように化粧水というお化粧のお水を塗っている。


「ほら、たかしちゃんもやってみなさい。これなら失敗とかないから自分でもできるわよ」

「は、はい」


 私は化粧水のボトルを手に取って。キャップを開けた。左手を器のような形にして、ボトルを逆さにした。だけど、ちょっとしか出てこなかった。


「振るのよ。こうやって」


 きらなちゃんのお母さんが身振り手振りで教えてくれた。私は真似をするように化粧水のボトルを持っている手を振った。すると、ちゃぱちゃぱと少しずつ化粧のお水が出てきた。どれくらい出していいかわからない。とりあえず手からこぼれる前にやめて、こぼれないように気をつけながら顔につけて塗り広げた。

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