たかしちゃんのちゅーで!
「五年かなあ。夏に蹴人が泊まりにきた時に撮ったやつ。私はその頃蹴人好き好きだったから。今は恥ずかしくってそんなことできないけど。ていうか普通に話すのも難しくなっちゃった。小学校二年の時かなあ、私、周りの人から綺麗だね、綺麗だねって言われてて嬉しかったの。でもね、蹴人がかわいい女の子が好きって言ったの。私、かわいいよりも綺麗の方が多く言われてたからどうしようって思っちゃって。髪型だけでもかわいくしようって思ってサイドテールにしてたの。今はツインテールだけどね。それでも今でも綺麗だねって言われることが多くてさ。蹴人はかわいい女の子が好きなのになあって思って」
「ふふふ、きらなちゃんかわいい」
「かわいくないんだよ」
「かわいいよ。そういえば阿瀬君のことはいつから好きなの?」
「えっと、小一の時かな。引っ越してきた蹴人と初めて遊んだ時に、私こけちゃって。膝擦りむいて痛くて泣いてたら助けてくれたの。蹴人もちっちゃいくせに私のことおんぶしようとして、ひっくり返って、私が地面に頭ぶつけて。余計に泣いたら蹴人がよしよしって。痛いの痛いの飛んでけーってしてくれて。それがあったかくてさあ、かっこよくてさ。好きになっちゃった」
「お隣さんの幼馴染かあ。なんかすごいね」
「付き合ってないけどね」
「黒髪の方がかわいいような気がするけど、金髪がいいの?」
「そう? じゃあ黒髪に戻そっかなあ。でも芽有たちがいるまでは金髪かなあ。舐められちゃだめだからね。黒髪に戻すってなっても高校生になってからかなあ」
「高校かあ、まだまだ先だね」
「たかしちゃんは金髪にしない?」
「えっとー……。だめだめ。想像してみたけど似合わないからダメー!」
「そうかなあ、似合うと思うけどなあ。サイドテールにしてリボン横につけたりしたらどう?」
「ええ、リボンを横に? それは考えたことなかったや。……でもなしかなあ。先生に怒られたくないし」
「たかしちゃん学校来てないじゃん」
「そうだった! じゃあ今のうち? ってきらなちゃん、今のうちじゃないよう。しないしない! 絶対に合わないもん!」
「ざんねーん。金髪仲間増やしたかったな。ここに金髪仲間になってもらおうかな」
「あーここちゃん似合いそう! いいなあ。羨ましい……」
「よし、金曜日に言ってみるかー」
「ここちゃんなら何も考えずにいいよっていいそう」
「そうね、冗談じゃなくなりそうだからやめとこ。あ、そうだ。それで、たかしちゃんは真似して写真撮ってくれるんでしょ?」
きらなちゃんは阿瀬くんのほっぺにちゅーをしてる写真を私に見せた。
「これ! 忠と! たかしちゃんのちゅーで!」
…………。
「ええええ! 写真の真似っこってこの写真の真似っこなの? わーん! きらなちゃんなんで先に行ってくれないのさ! こんな写真撮れないよう!」
「だって先に言ったらどんな写真隠してるかバレちゃうでしょ! もう決まりだからね。たかしちゃんは忠のほっぺにちゅー写真を撮ること! そんで私に見せること!」
「ううう、考えただけで心臓がばくばく言うよう」
「だめよ。絶対だからね」
「い、いつかね」
「何言ってんの。夏休み中よ。お盆休み始まるんだからどうせデートとかするんでしょ。その時に撮りなさい。ほら、カメラ貸してあげるから」
きらなちゃんは戸棚からインスタントカメラを渡してくれた。
渡してくれた。じゃないよう。いらないよう。
「それでしっかりおさめなさいよ。あ、そうだ。せっかくだからさ、初お泊まり記念に一枚撮っとこっか。ほら、ちゃんとひっついて。はいっチーズ!」
パシャリ。
インスタントカメラが音を立てた。多分写真が撮られている。写真の写り具合は現像されてからのお楽しみだ。目を瞑ってないといいけど。
「はいカメラ。写真待ってるからね」
「うううー……」
「よしよし、じゃあアルバムでもみるかー。私の小さい時からいっぱいあるよ。




